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2025年09月30日公開

洋上風力はエネルギー資源大国への転換の起爆剤となる

セーブアース セーブアース (第36回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2025年12月30日23時59分
(あと88日15時間47分)

ゲスト

1964年大分県生まれ。92年原子力資料情報室、2000年環境エネルギー政策研究所副所長、09年駐日英国大使館気候変動政策アドバイザーなどを経て、10年より国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のシナリオ&政策・アジアパシフィック地域マネージャー。11年より現職。

概要

 2025年8月、三菱商事連合が秋田県と千葉県沖で計画していた大規模洋上風力発電事業からの撤退を表明した。コストの大幅な上昇が理由とされ、国が成長産業として期待する洋上風力政策に冷や水を浴びせた格好だ。

 風力発電はすでに世界的には拡大しており、陸上風力は1テラワット超が導入済みだ。洋上風力も83ギガワット(2024年末)に達し、欧州や中国がリードしている。特にヨーロッパは域内で役割分担しながら産業を育成してきた。風力は、太陽光と時間帯を補い合いながら安定的に電力を供給できる利点もある。しかし、日本の風力発電全体の導入量は世界全体の1%に過ぎず、かつて存在した国産風車メーカーも相次いで撤退している。

 自然エネルギー財団の大林ミカ氏は、世界の動向を踏まえながら日本で風力発電産業が停滞してきた要因として、電力会社による系統接続の制約、政策の不安定さ、環境アセスメントの長期化などを挙げる。固定価格買取制度で太陽光は急拡大したが、風力は立地や系統条件の制約が大きく、導入に時間がかかる。一方で、洋上風力の潜在力は極めて大きい。着床式で500ギガワット、浮体式で1,000ギガワットと試算され、現在の電力需要の8〜9倍に相当する規模が存在する。

 洋上風力発電は近年は出力15メガワット級の大型タービンが主流になっている。海底に固定する「着床式」と、洋上に浮かべた浮体に風力タービンを載せる「浮体式」の2種類があり、日本では欧州と違い深海部が多いので、浮体式の可能性が高く、また技術開発で世界をリードすることも期待される。長崎県五島沖では浮体式の実証機が15年以上稼働している。

 日本の政策設計には課題が多い。2019年に「再エネ海域利用法」が施行され、国が区域を指定して公募を行う仕組みが整ったが、地域の合意形成や送電線費用負担は依然として事業者任せだ。今回の秋田と千葉の案件も、低価格入札で三菱が総取りしたものの、コスト高騰と制度的制約の狭間で頓挫した。大林氏は、送電線や港湾整備の費用負担のあり方の見直し、内航船ルールの柔軟な運用が不可欠だと指摘する。また、日本単独でコストを下げるのは困難であり、台湾や韓国など近隣諸国との「リージョナルコラボレーション」による産業基盤の必要性も訴える。

 「日本は資源小国と言われてきたが、実は広大な海洋エネルギー資源を持つ」と大林氏。洋上風力は、太陽光と並んで再生可能エネルギーの両輪となることが期待される。今回の撤退劇は痛手ではあるが、制度や産業構造を見直す契機ともなり得る。国が適切なルールを整え、企業が持続可能なビジネスモデルを築ける環境を整えることで、日本は“海洋国家”として再生可能エネルギー大国に転じる可能性を秘めている。

 洋上風力の可能性と課題について、環境ジャーナリストの井田徹治とキャスターの新井麻希が、自然エネルギー財団の大林氏と議論した。

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