日本が再エネへの転換を急がなければならないこれだけの理由
自然エネルギー財団事業局長
1964年大分県生まれ。92年原子力資料情報室、2000年環境エネルギー政策研究所副所長、09年駐日英国大使館気候変動政策アドバイザーなどを経て、10年より国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のシナリオ&政策・アジアパシフィック地域マネージャー。11年より現職。
第15回のセーブアースでは現在の日本のエネルギー政策の問題点を総括した上で、気候危機に対して日本がとるべき政策を、前回に引き続き自然エネルギー財団事業局長の大林ミカ氏とともに考えた。
2050年までのカーボンニュートラルを目指すとしている日本は、2030年までに電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を現在の20%程度から36〜38%まで引き上げる目標を掲げている。また原発の比率も現状の7%から20〜22%まで引き上げる一方で、現在70%以上を占める化石燃料を41%まで減少させるとしている。
しかし大林氏は今のままでこの目標を達成することは不可能だという。太陽光発電はコスト効率が高い電源として世界的に導入が加速しているが、固定価格買い取り制度(FIT)頼みでそれ以外の有効な施策を打つことができていない日本では、太陽光発電の新規導入量はむしろ減少しつつある。大林氏はそもそも36〜38%という目標も世界的に見ると低すぎるが、現状のままではそれさえ実現できないと指摘する。また原発の数値目標も再稼働に向けた道筋がつかない中では現実的ではないため、このままでは結果的に化石燃料への依存が続くことになってしまう。
政府は火力発電を続けるためにCO2を排出しない水素・アンモニア燃料への切り替えや、排出されたCO2を回収し地中に埋めるCCSなどの技術の導入に重点を置いているが、大林氏は安価なエネルギー源として国際的に再エネが主流になる中で、まだ実用化のめどが立っていない新しい技術をエネルギー政策の主軸に据えるのは合理的ではないと批判する。
政府はまた、回収し切れない二酸化炭素を排出枠が余っている途上国に輸出することも視野に入れているが、これは国内で出たゴミを途上国に押し付けるのと同じ構図で倫理的にも問題が大きい。
結局のところ日本は火力発電などの既得権益を守りたいがために、新産業への移行ができない状態が続いているが、これを実現するためには強い政治のリーダーシップが不可欠となる。
日本のエネルギー政策がなぜ理に適ったものにならないのかについて、大林氏と環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。