気候変動による雪不足で危ぶまれる冬季五輪
Protect Our Winters Japan 事務局長
1977年静岡県生まれ。2021年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業(地理・環境学士)。07年東京大学大学院修士課程修了(国際協力学)。18年WWF(世界自然保護基金)ジャパン入局。ODAコンサルタントを経て現職。
今年もまたバレンタインデーに合わせて、スーパーやコンビニで多種多様なチョコレートが売られている。
しかし、チョコレートの背後には原料である「カカオ」を巡る深刻な環境問題と社会課題が隠されている。菓子メーカーから多額の広告料を受け取る主要メディアが、バレンタイン商戦に水を差すような批判的な報道を控えていることもあり、日本ではチョコレートの裏側にある様々な問題がほとんど知られていない。
まずカカオ生産の裏側には、深刻な森林破壊がある。衛星データの分析によると、チョコレートの日本への最大輸出国ガーナでは、過去40年間で森林面積が半減している。そしてその森林減少の約半分が、カカオ農園の拡大によるものと判明している。
本来、湿気と適度な日陰を好むカカオにとって、森林は守り神のような存在だ。しかし、皮肉なことに、そのカカオを植えるために森が切り拓かれ、結果として生育環境を自ら悪化させるという悪循環に陥っているのだ。
2024年のカカオ不作と気候変動による供給不安を背景に、チョコレートの市場価格は高騰しているが、その恩恵はカカオ農家の多くを占める末端の小規模な農家にはほとんど届かない。貧困に喘ぐ小規模農家が収入を増やすためには収量を増やすしかない。そのために手っ取り早く森を切り開いたり、人件費を抑えるために子供を働かせたり、環境汚染を招く違法な金採掘に手を染めているのが実情だ。
この危機的な状況を打破するために、WWFジャパンなどの支援団体が推進しているのが、アグロフォレストリー(農林複合経営)という農法だ。これは、カカオの木単体ではなく、同じ土地にフルーツの木や木材用の木など様々な種類の樹木を一緒に植える方法だ。こうすることで大きな木が日陰を作り、適度な湿度を保つことで、気候変動や病気に強い農園になったり、カカオが不作でも、バナナや木材など他の作物から収入を得られたり、森に近い環境を作ることで生物多様性が保全されるなどの効果が期待できる。現在、ガーナの国立公園周辺では、苗木の提供や農家への研修などを通じて、この農法への転換が急ピッチで進んでいる。
カカオ農家の問題は遠い国の問題に思えるかもしれないが、実は日本に住む私たちの選択がカカオ生産の未来を左右する。それは私たちが消費者として何を買うかを決定する力を持っているからだ。チョコレートを買う際、生産者に正当な対価が支払われていることを証明する「フェアトレード認証」や、環境保全と持続可能性に配慮されていることを証明する「レインフォレスト・アライアンス認証」のマークが付いているかどうかを確認してほしい。残念ながら日本で売られている国内メーカーのチョコレート製品には認証マークが付いていないものが圧倒的に多いが、認証マークが付いているものを買うことで、チョコレートの向こう側で苦しむ人を減らすことに貢献できる。そして、ひいてはそれが地球温暖化や環境保全の一助ともなる。
WWFジャパン自然保護室森林グループ長の相馬真紀子氏をゲストに招き、甘いチョコレートの裏側にある環境問題と社会課題と日本がその問題の解決に貢献する方法などについて、環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。