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2022年04月16日公開

未曾有の大量避難者を生んでいるウクライナ危機に日本の難民政策は対応できているか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1097回)

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完全版視聴期間 2022年07月16日23時59分
(終了しました)

ゲスト

難民を助ける会会長・立教大学教授
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1963年茨城県出身。87年早稲田大学政治経済学部卒業。90年同大学大学院政治学研究科修士課程修了。2007年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。外資系企業勤務を経て、91年より「難民を助ける会(AAR)」事務局勤務。同会事務局長、理事長などを経て、2021年より現職。10年より立教大学社会学部・大学院21世紀社会デザイン研究科教授。著書に『スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察』、『入門 人間の安全保障 増補版 恐怖と欠乏からの自由を求めて』、編著に『スレブレニツァ・ジェノサイド-25年目の教訓と課題』など。

著書

概要

 日本は世界中でもっともウクライナに強いシンパシーを感じているというデータが最近発表された。

 毎年、世界各国の競争力を比較する「グローバル・ソフトパワー・インデックス」を発表しているイギリスのブランドファイナンス社が、2022年版の「グローバル・ソフトパワー・インデックス」の中で、調査対象となった世界120か国で「ウクライナ紛争は誰に責任があると思うか?」を質問したところ、「ロシアが悪い」と答えた人の割合が世界でもっとも高かったのが日本だった。その割合は81%だった。これにイギリスの74%、ドイツの67%、フランスの64%、ブラジルの63%が続いた。ロシア以外の選択肢として、ウクライナ、アメリカNATOが用意されていたが、興味深いのはアメリカでロシアが悪いと答えた人の割合が6割にとどまる一方で、「アメリカに責任がある」と答えた人の割合が2割を超えていた。

 メディア報道の影響があるのだろう。元々ウクライナという国は多くの日本人にとってそれほど馴染みの深い国ではなかったと思われるが、こと今回の戦争に関しては、日本がウクライナとの連帯感を強く抱いていることが、今回の調査によって数字として明らかになった形だ。

 しかし、紛争当事国に対して日本が行える支援は限られている。基本的に武器の供与はできないし、派兵ももちろん無理だ。そこで日本ができる最大の支援が人道的支援だ。中でも今回のウクライナ戦争で発生している未曾有の避難民の受け入れは、日本が行うことができる最大の人道的支援となり得る。逆に言えば、それ以外はあまり日本にできることはない。

 ロシアによる武力侵攻によって既に500万人ものウクライナ人が国外への避難を余儀なくされているが、今のところその大半は、250万人を受け入れているポーランドを筆頭に、ルーマニアハンガリーなどの周辺国に避難している。(それに加えてさらに500万人あまりが国内で避難を強いられている。)しかし、難民問題に詳しいNGO難民を助ける会の会長で立教大学教授の長有紀枝氏によると、周辺の受け入れ国では一般家庭が自主的に避難者を受け入れている場合が多く、紛争が長期化した場合、受け入れ家庭の負担が大きな問題になってくることが懸念されるという。

 さて、問題は日本だ。4月5日、ポーランドを訪問していた林芳正外相が、ウクライナからの避難者20人とともに帰国したことが大きく報道された。この20人を含め、日本政府は今回、ウクライナからの避難者を400人あまり受け入れている。しかし、それはあくまで特例措置としての一時受け入れであり、難民条約や入管法に基づく正規の難民ではない。知る人ぞ知るところだが、日本は国際的には「難民鎖国」で知られており、1951年の難民条約の締約国として難民の受け入れが条約上義務づけられているものの、難民を極端に狭く定義することで、ほとんどの難民を拒絶してきた。難民申請をした人に対して難民として受け入れられる人の割合を示す「難民庇護申請認定率」というものがあるが、2020年の日本の認定率は0.7%だった。これはカナダの75%、ドイツの52%、イギリスの22%、フランスの13%と比較した時にあまりにも低い。

 元々、難民に対して極端に門戸を狭く閉ざしているところに、さらに日本は戦争や内戦から逃げてきた人々を難民として認定していない。確かに1951年の難民条約には難民要件の中に戦争は入っていなかったが、その後、1969年アフリカ統一機構「難民の地位に関する議定書」や1984年「カルタヘナ宣言」などで、戦争や内戦によって故郷を追われた人も広義の難民に含むとした解釈が世界では一般化されてきている。

 今回日本人の多くがウクライナにとびきり強いシンパシーを持ちながら、その一方で、政府がウクライナ難民をあくまで「避難民」としてしか受け入れられなかったことで、期せずしてこれまで必ずしも十分に注目されてこなかった日本の難民政策に焦点が当たる結果となった。

 今週はNGOの立場から長年難民問題に取り組み、また近年はジェノサイド戦争犯罪についても研究領域を拡げている長有紀枝氏と、ウクライナからの避難民受け入れで露呈した日本の難民政策の弱点や問題点は何だったのか、なぜ日本は難民を受け入れようとしてないのか、世界はロシアの戦争犯罪をジェノサイドとして裁くことができるのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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