2013年12月26日
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投票価値の平等と国会の裁量の境界線をどこに引くか

木村草太氏(憲法学者・首都大学東京准教授)
インタビューズ (2013年12月26日)

 投票価値の格差が最大4.77倍だった7月の参院選の無効を訴えた裁判では、全国で起こされた16の高裁訴訟のうち、3件で「違憲」、残る13件で「違憲状態」の判決が下されるという厳しい結果が出た。
 先の衆院選に続き、司法は投票価値の不平等を国会が速やかに是正することを要求していることが、明確になった格好だ。
 しかし、かつて裁判所は地方の選挙区の一票の価値に都市部よりも重い比重を置いた選挙制度を「立法府の裁量の範囲」として容認してきた。裁判所の判断基準はなぜ変わったのか。
 憲法学者で首都大学東京准教授の木村草太氏は、司法が一票の価値の平等をより厳密に求めるようになった背景には、政治に対する国民の根強い不信感があると指摘する。政治が主権者たる国民の利益を体現できていないと感じる人が増えている原因の一端に、投票価値の不平等があるとの思いを持つ人が多いことは間違いなさそうだ。
 しかし、有権者側にも一票の格差について、やや誤解があるのではないかと木村氏は言う。農村部に対して都市部の一票の価値が軽ければ、自動的に農村にとって有利な政策が実行されるとの前提で議論が交わされているようだが、そもそも国会議員とはどの選挙区から選出されようが、全国民の利益を代表するものであって、特定の地域の利益代表になってはならないことが憲法で定められている。
 また、最高裁は過去の判例で、選挙制度そのものや選挙区の区画を都道府県別ごとに行うこと、国会の定数を何人にするかなどは国会の裁量の範囲であるとの判断を示している。もし、現行の選挙制度の下で都道府県ごとの区画や衆参の定数を維持した場合、どんなに細かい区画調整を行っても衆院で1.6倍、参院で4.3倍の格差が残ってしまうことは避けられないと木村氏は言う。
 高裁による一連の違憲・違憲状態判決は何を意味しているのか、そもそも憲法は投票価値の平等を要求しているのかなどについて、憲法学者の木村草太氏にジャーナリストの神保哲生が聞いた。

 
木村 草太きむら そうた
(憲法学者 首都大学東京准教授)
1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業。同大学法学政治学研究科助手を経て06年より現職。著書に『憲法の創造力』、『憲法の急所』、『平等なき平等条項論』など。共著に『憲法学の現代的論点』など。
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