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天皇・皇族の人権のあり方を問いつつ最高裁判決を検証してみた

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1072回)

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完全版視聴期間 あと53日23時間7分
公開日 2021年10月23日

ゲスト

東京都立大学法学部教授

1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科助手、首都大学東京(現東京都立大学)准教授などを経て、16年首都大学東京教授。著書に『憲法の急所 権利論を組み立てる』、『テレビが伝えない憲法の話』、『自衛隊と憲法』、共著に『むずかしい天皇制』など。

著書

概要

 今回とりあげる2つのテーマは、根本的に根っこのところではつながっている問題なのかもしれない。

 2つのテーマとは、まず1つ目は、秋篠宮家の長女眞子内親王の結婚を機にあらためて考えてみたい天皇・皇族の人権の問題。そしてもう一つは、来週の総選挙と同時に行われる最高裁判所判事の国民審査を前に、今回審査の対象となる判事たちが主要な裁判、とりわけ基本的人権が問われるような裁判でどのような判断を下してきたかを検証することで、どの判事を承認すべきか、あるいは罷免要求すべきかの判断材料を提供することだ。

 天皇、皇族の人権問題については、秋篠宮が2020年11月に記者会見で眞子内親王の婚姻を認めた際に「結婚することを認めるということです。憲法にも『結婚は両性の合意のみに基づいて』とあります。本人たちが本当にそういう気持ちであれば、親としてはそれを尊重するべきものだと考えています」と語ったのを受け、「本人の意思が尊重されるべき」と主張する陣営と、「天皇・皇族にはそのような自由はない」と主張する陣営に議論が二分されているように見える。日頃から天皇や皇室を尊崇することの重要性を説く保守論壇ほど、皇族にそのような権利を認めるべきではないと主張する論者が多いのがやや不思議に感じるところではあるが、いずれにしても今回の眞子内親王の結婚が、マスコミ報道などによって誰からも無条件で祝福されるような性格のものではなくなってしまったことから(そもそもSNS全盛の今日においてそのような結婚があり得るかどうかは定かではないが)、期せずして天皇、皇族の権利、とりわけ人権の有無という根本的な問題をきちんと考えざるを得ない状況が生まれている。

 憲法学者で近著に『むずかしい天皇制』がある木村草太東京都立大学教授は、現行憲法の下では天皇、並びに法的にはそれに準ずる立場にある皇族には、秋篠宮が語ったような憲法24条に基づく婚姻の自由というものは存在しないと解されると説く。

 現行憲法は言論・表現の自由、幸福追求権、財産権、職業選択の自由など様々な基本的人権を国民に対して保障しており、婚姻の自由もその中の一つだ。しかし、憲法1条から8条で天皇は国民ではなく「国民統合の象徴」と位置づけられ、その地位を「世襲」とされた上で様々な国事行為を行うことが定められ、しかもその国事行為は内閣の助言と承認が必要となることが定められているほか、第8条では財産権を制約され、第2条に基づく皇室典範によって、婚姻さえも皇室会議の承認事項とされている天皇の基本的な人権が制約されていることは誰の目にも明らかだ。その考え方は、「天皇の基本的人権が法理的な制限を受けられるのは憲法上も認められること」(1963年3月29日衆議院内閣委員会・高辻正己内閣法制次長)、「基本的人権の享受についておのずからそこに制限がある・・・天皇の表現なり言論というものについては当然制約がある」(1975年11月20日参議院内閣委員会・吉國一郎内閣法制局長官)らの国会答弁によっても、政府の公式な見解として裏付けられているところだ。

 しかし、木村氏によると、こと女性皇族の場合、皇族であることから単純に憲法24条に基づく婚姻の自由が認められると考えることには無理があるものの、皇室典範10条が立后(天皇が結婚して皇后を迎えること)と皇族男子の結婚のみが皇室会議の承認を要求しており、皇族女子の婚姻については何ら定めがないことに加え、皇室典範12条では「皇族女子が天皇、皇族以外のものと婚姻したときは皇族の身分を離れる」ことのみが定められていることから、現行法の下でも本人の意思に基づいて結婚することができると解されるという。

 つまり、現行憲法、並びにそれに基づく皇室典範の下では、男性皇族には「婚姻の自由」は認められていないが、女性皇族については、それが制限されるべき法的な根拠が見当たらない、よって婚姻の自由が存在するということになる。少なくとも法的には、眞子内親王が誰と結婚しようが、他人があれこれ言うべき問題ではないということになるようだ。

 その上で、眞子内親王の結婚に限らず、天皇及び皇族の法的な地位を現在のような「日本国憲法上の飛び地」(木村氏)、つまり例外的に憲法が適用されない特殊な存在として、生まれながらにして権利は大幅に制約されるが義務だけは存在するような地位に留め置いたまま、見方によってはひどい人権侵害が起きている現状を放置しておくことが日本人として本当にいいのかどうかは、もう少しオープンに議論されてもいいのではないだろうか。ましてや、皇室を愛しその存続を願うものであれば、なおさらのことではないか。

 番組前半では木村氏と、眞子内親王の結婚を機に、天皇、皇族の法的な地位と人権、そして日本人としてこの問題をどう考えるべきかなどを議論した。

 番組の後半は、10月31日の総選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査について、今回審査の対象となった判事がこれまでどのような裁判でどのような判決を下してきたかを検証した。

 今回は2017年の衆院選と2019年の参院選一票の格差違憲訴訟、夫婦別姓違憲訴訟、沖縄米軍基地の移転を巡る判決2件、袴田事件大崎事件の再審請求などで、今回審査対象となっている裁判官がどのような立場を取ったかをとりあげた。どの判決もそれぞれ裁判官の価値基準を判断する上では有益な判決・決定となっていた。

 ただし、今回は11人の裁判官が審査の対象となるものの、制度上の欠陥ゆえにそのうち4人の裁判官はつい最近任命されたため、最高裁の主要な判決や決定には関与しておらず、判断材料がなかった。これは制度上、最高裁の国民審査が、判事に任命された後の最初の総選挙時に国民審査を受けることになっていることから生じる問題だ。実は最高裁裁判官の国民審査というのは大方の理解とは異なり、憲法の番人と呼ばれる最高裁の裁判官のこれまでの判断の是非を審査する機会を国民に与えるためのものではなく、その裁判官を任命した内閣の判断の是非を審査するためのものなのだそうだ。実際、最高裁の裁判官は任命から10年後に2度目の審査を受けることになっているが、基本的に最高裁の裁判官に任命するのはほぼ例外なく60歳以上の人で、最高裁判事は定年が70歳のため、2度目の審査を受ける裁判官が出る可能性は事実上ゼロに近い。

 個々の裁判官の評価もさることながら、最も審査でダメ出しをされなければならないのは、このようなでたらめな制度とそれを放置している今の政府、そして国会ではないかと思うのは、われわれだけだろうか。

 同じく最高裁の裁判官は出自別に元裁判官、元検事、元行政官(元官僚)、元学者、元弁護士の5つのカテゴリーに大別され、それぞれに決まった数の枠が割り当てられていることも知っておいて損はないだろう。元々15人の最高裁判事は裁判官枠が6、検事枠が2、行政官枠が2、学者枠が1、弁護士枠が4あった。しかし、2020年に安倍政権は弁護士枠を3に減らし、学者枠を2に増やした。国権と民権の線引きが求められるような裁判が最高裁に持ち込まれた時、裁判官、検事、行政官は国権側に立ち、弁護士が民権側の立場を主張する傾向が強い。いや、これはほぼ例外なくそうなっていると言っていいだろう。民事、刑事、行政訴訟、違憲訴訟など全ての裁判で最終決定を下す日本における法解釈の最高権威の地位に君臨する最高裁は元々、国権の代表者と民権の代表者という意味では、民権側が圧倒的に数的不利な状態に置かれているのだ。これでは国賠訴訟などが滅多に認められないのも当然だろう。ちなみに学者はケースバイケースだが、今回国民審査の対象となっている宇賀克也元東京大学教授は、保守化が進む最高裁にあって意識してバランスを取ろうとしている面もあるのかもしれないが、民権側に強い理解を示す判断を繰り返し下している。

 日本は三権分立がきちんと確立しているものと理解されているが、最高裁の判事を任命するのも内閣だし、三権の長となる最高裁の長官を指名するのも内閣だ。つまり最高裁判事の国民審査で意思表示をすることは、単にその裁判官に対する承認、あるいはダメ出しの意思表示を超えて、そのような人事を敢行している内閣に対する意思表示を意味していることも知っておくべきだろう。

 木村氏とともに今回、国民審査の対象となる最高裁判所裁判官が主要な判決・決定でどのような立場を取ってきたかを検証した上で、現在の最高裁のあり方などを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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