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安倍政権の検証(1)

日本の民主政治を変質させた責任を問う

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1013回)

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公開日 2020年09月05日

ゲスト

上智大学国際教養学部教授

1970年東京都生まれ。93年東京大学文学部卒業。95年英オックスフォード大学哲学・政治コース卒業。2003年米プリンストン大学大学院博士課程修了。学術博士(政治学)。東京大学非常勤講師、上智大学グローバル・コンサーン研究所所長などを経て11年より現職。著書に『右傾化する日本政治』、『私物化される国家 支配と服従の日本政治』、編著に『徹底検証安倍政治』など。

著書

概要

 憲政史上最長の政権となった安倍政権が終わろうとしている。

 約5年半続いた小泉内閣の後、自民党は安倍、福田、麻生と1年前後しか持たない不安定な政権が3代続き、2009年には政権政党の座から転落した。しかし、2012年に捲土重来、安倍晋三総裁の下、政権の奪還に成功し、そこから7年と8ヶ月の長きにわたる安定政権を維持してきた。安倍政権前半はアベノミクスを前面に押し出すことで経済的な安定を確保した上で、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を可能にする安保法制、共謀罪など、歴代政権がたびたび挑戦しては挫折してきた大きな政策課題に積極的に取り組み、足並みの揃わない野党にも助けられ、これをことごとくクリアしてきた。特に上記の3つはいずれもアメリカの意向を強く反映したものだった。

 その一方で、政権の後半はこれといった成果もあげられず、次々と噴出するスキャンダルで立ち往生する場面が多かった。政権としては憲法改正という大きな課題を前面に押し出すことで、なんとか推進力を得ようと務めたが、相次ぐ閣僚の失言や不祥事、辞任や、統計偽装、森友・加計学園問題や桜を見る会、検察官の定年延長問題など、常に政権の足下がぐらついている状態が続いた。

 そうした中で、日本が新型コロナウイルス感染症に見舞われると、PCR検査の「目詰まり」やアベノマスク、星野源の「うちで踊ろう」ビデオ、利権丸出しのGo To トラベルなど、安倍政権は多くの国民の嘲笑を誘うような稚拙な施策ばかりを打ち出す結果となり、最後は健康問題から辞任に追い込まれるという、「歴代最長政権」と呼ぶにはあまりにお粗末な最後を迎えることとなった。

 しかし、日本が25年に及ぶ政治や行政の制度改革を通じていわゆる「官邸主導」体制の構築を進めた結果、常にお家騒動が絶えなかった野党の体たらくに助けられ、安倍政権は7年余にわたり「一強」状態を享受することができた。そして、その絶大な権限を使い、安倍政権はこれまで日本の政治で不文律とされてきた様々な政治文化をことごとく破壊してしまった。

 また、安倍政権の下では、政治とメディアの関係も大きく変質した。元々、新聞、テレビ、通信社など記者クラブに所属する既存メディアは政府から多くの特権を与えられ、それを当然のように享受してきたが、過去の政権はさすがにそれを人質に取ることで、メディアを政権の宣伝や延命に利用することまではしてこなかった。しかし、政権交代を経験し、権力の維持のためにできることは何でもするのが当たり前となった安倍政権の下では、それはデフォルトになった。

 比較政治や政治思想が専門の中野晃一上智大学教授は、安倍首相の後継と目される菅義偉官房長官が、安倍政治の継承を掲げていることを指摘した上で、安倍政権下で醸成された、いわば「何でもあり」の政治文化は今後も引き継がれていくことになるだろうと指摘する。安倍首相の辞任で「安倍内閣」は終わるが、安倍政権はこれからも続くと中野氏は語る。つまり、菅内閣は安倍政権の菅内閣という位置づけになるだろうというのが、中野氏の見立てだ。

 安倍政権とは何だったのか。なぜ安倍政権は歴代最長の長期政権を維持することができたのか。安倍政権の下で日本の政治はどう変質したのか。もはや自民党はかつての自民党とはまったく別物の政党になってしまったのか。シリーズでお送りする『安倍政権の検証』、第1回目は中野晃一氏とともに、安倍政権の政策や政治スタイルを検証した上で、それが日本の政治文化や社会に与えた影響を議論した。

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