日米地位協定を盾に在日米軍情報の公開を妨げているのは誰か



森友学園問題に関しては政府が情報公開裁判で上告を断念したため、高裁判決が命じた関連文書の開示が現在進行形で進んでいる。3回目となる8月には、情報公開請求への対応に関する文書など約1万8,000ページが開示された。
主要メディアでは森友学園問題は既に過去の問題のように扱われている謗りは免れないが、開示された文書は実際は「宝の山」だと情報公開クリアリングハウスの三木由希子氏は言う。それはその中に、国有地の不当な廉価払い下げ疑惑と現職総理の辞任発言という、エリート官僚のクビがいくつ飛んでもおかしくないような2つの大波に襲われた時、政府内部、とりわけ中央官庁の官僚たちがどのような動きをしていたかを浮き彫りにしてくれる、貴重な資料が満載されているからだ。この手の文書は滅多なことではお目にかかれない代物だと三木氏は言う。
森友学園問題には大きく分けて2つの問題がある。1つは森友学園側が国有地の払い下げに際して、政治家や現職総理の妻を後ろ盾にすることで本来は有り得ない破格の値下げが行われていたのではないかという問題。そしてもう1つが、当時の安倍首相が、自分や妻がその取り引きに関与していた場合、総理のみならず国会議員も辞めると国会で答弁してしまったために、妻昭恵氏の関与を隠す目的で公文書の改ざんや破棄が行われていたという問題。
特に後者の文書改ざんに際しては、実際の改ざん作業を行ったとされる当時近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが、公文書毀棄という違法行為を強いられたことを苦に自殺に追い込まれ、その妻雅子さんが夫の死の真相究明を求めて関連文書の開示訴訟を起こしこれに勝訴したことで、これまで疑惑に過ぎなかった森友問題の具体的な経緯が徐々に明らかになってきている。
ただ、財務省が開示する一連の交渉記録は合計17万ページにものぼる。財務省はこれを順次開示しているところだが、ここまで開示された分だけでも2万8,800ページに及んでいるので、それをすべて解析するには時間を要する。
とはいえ、ここまで開示された文書では、土地の払い下げ交渉の過程で政治家の名前が出た後に不当な値引きが行われていた疑惑がメディアに報じられた後の政府内の動きなどが、かなり浮き彫りになっている。特に2017年2月9日に朝日新聞が森友学園に不当に安い価格で土地が払い下げられた疑惑をスクープした直後に財務省から官邸に送られたメールの内容や、財務省が近畿財務局に送った「重要作業依頼」と題するメールでは、決裁文書の「修正・差し替え」=改ざん指示が出されていたことから、安倍首相の「辞める」発言の直後から、官邸や財務省から近畿財務局に対して文書の改ざんが指示されていたことが見て取れる。
また、森友学園への8億円を超える値引きについても、これが名目のゴミ処理費用ではなく実際は「開校遅延による損害賠償回避」のためだったと赤木氏の手記に記されていたことも明らかになった。さらに、昭恵夫人と籠池夫妻の3ショット写真提示後に財務局の対応レベルが一気に上がった経緯も文書から明らかになり、総理夫人が官僚組織に及ぼす影響力の大きさが浮き彫りになった。
一方で、改ざんに直接関与した高官は責任を免れ、多くがその後も順調に出世を果たす一方、現場職員が責任を押し付けられる構図も明らかになった。赤木氏が残した「公用文書毀棄罪」に関するメモは、当時から自身が違法行為に加担させられているという認識を持っていたことを示すものだった。
今回は赤木雅子氏と弁護団の地道な努力によって裁判を経てようやくここまでの情報開示に漕ぎ着けたが、もし日本に最初からこれらの文書が公開される仕組みが備わっていれば、そもそも森友問題などは起きなかったし、赤木俊夫さんが自死に追い込まれることもなかった。森友問題とその後の裁判を経た文書開示は、日本の情報公開制度がまだまだ多くの課題を抱えていることも明らかにしていると言えるだろう。
裁判所命令によって財務省が徐々に開示し始めている森友問題を巡る公文書が露わにしつつある政治家の口利きの実態や政治と官僚の癒着、高級官僚は現場に責任を擦り付け出世している実態、そして日本の情報公開制度の課題などについて、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。