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2023年05月31日公開

警察が保有する個人に関する秘密情報の中身が「完全なブラックボックス」のままで大丈夫なのか

ディスクロージャー ディスクロージャー (第8回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年08月31日23時59分
(終了しました)

概要

 情報公開をライフワークとする三木由希子とジャーナリストの神保哲生が情報公開法や情報公開制度をめぐる様々な論点を掘り下げるディスクロージャー&ディスカバリー。第8回目のテーマは警察が保有する個人の秘密情報の開示の現状をとりあげた。

 情報公開法は一部の例外を除き、原則として行政機関が保有する情報の公開を義務づけているが、防衛、外交と並び警察が保有する情報については、「捜査情報」であることを理由に基本的には開示の対象外とされている。たしかに警察が捜査情報を開示すれば、犯罪捜査に影響を与える恐れも出てくるし、警察が保有する情報には個人のプライバシーに関わる高度にデリケートな情報が多いことも容易に推察できることから、他の行政機関と同様の公開基準が適用されないことは理解できる。しかし、警察が保有している個人情報は一律に全面非開示とされ、警察が個人に関するどのような情報を収集し保有しているかについて、その情報の属性や種類まで一切開示されないままで本当にいいのかという疑問は残る。警察が個人に対して違法な情報収集を行っていないという保証はどこにもないし、市民の側にとっては、警察が保有する自分自身に関する情報の中身がわからなければ、その中に間違いや人権侵害にあたるものが含まれていても、その訂正を求めることができない。また、捜査対象にもなっていない個人の指紋やDNA情報が収集されているとすれば、それこそ重大な人権侵害となる。

 情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏は現状では警察が保有する個人情報の実態は「完全なブラックボックス」であり、警察がどんな目的でどんな情報を集めているのかなどはまったく開示されていないという。ただし、警察が保有する個人の秘密情報の公開基準については、個人情報保護法と情報公開法の間に差異がある。個人情報保護法では警察の捜査情報は外交・防衛関係と並びその例外とされているが、情報公開法では警察が保有する情報についても「公にすることにより、犯罪予防、捜査など公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認める」情報のみが公開の対象外とされており、より厳しい要件が科されている。

 警察が収集した個人情報は無条件で開示義務が免除されているのか、それとも捜査に影響を与える恐れのある情報のみが開示義務が免除され、それ以外の情報は原則として開示対象となるのか。三木氏の情報公開クリアリングハウスは2016年5月から警察庁に対し、警察が保有する個人の秘密情報の開示を求める情報公開請求を行ってきた。その過程で、当初は全体が黒塗りされた文書しか出てこなかったところが、請求対象を「DNA型データベース」などと特定して再度請求をしたところ、黒塗りだったものと同じ文書の大半の部分が開示された状態で出てきた。同じ文書の開示を請求しているにもかかわらず、請求の仕方によって情報が開示されたりされなかったりすることがわかったのだ。それを受けて三木氏らは2018年、情報公開訴訟に踏み切った。

 一審で東京地裁は原告側の主張を一部認め、警察が保有する個人の秘密情報についても、情報の属性や項目などについては開示義務があるとの判断を示した。これは原告にとっては大きな前進だ。しかし、現行制度の下での情報公開訴訟では、裁判所は非公開とされた情報の中身を実際に見て判断する「インカメラ」の権限を持たないため、警察から「この情報が公開されると捜査に影響が出る」と言われてしまえば、それを鵜呑みにするしかない。結局、「捜査に影響が出るため非開示」とされた情報の中身にどのような属性の情報が含まれているのか、またそこには何種類の情報が含まれているのかなどは不明のままだ。これはうがった見方をすれば、警察が自分たちにとって不都合な情報については、「捜査に影響が出る」と言いさえすれば開示しないで済むということになり、情報公開法の重要な目的のひとつである行政機関を監視する目的を果たすことができない。

 今月13日に出された高裁判決も基本的に一審判決を踏襲していたため、三木氏らは最高裁への上告を決めたという。

 そもそも裁判所がインカメラで非公開とされた情報の中身を確認することができない中で、警察がそれを非公開としたことの妥当性を判断しなければならない現在の情報公開制度は正常に機能していると言えるのか。捜査情報そのものは開示できなくても、警察がどのような情報を集めているのか、特定の個人に対して捜査とは無関係な情報収集を行っていないのかなどを裁判所や市民社会が正当に監視する手段はないのか。唯一インカメラ権限を持ち、非公開とされた情報の中身を見た上でその妥当性を審査する権限を与えられている国の情報公開・個人情報保護審査会はその職責を果たしているのか。複数の地方自治体の情報公開審査会の委員を務めた経験を持つ三木氏によると、現在の審査会は膨大な数の審査に追われる中、一つひとつの事案に踏み込んだ判断をしない傾向にあるというが、そんなことで日本は本当に大丈夫なのか。

 警察情報の情報公開のあり方やインカメラ権限を持たない裁判所の情報公開訴訟における機能、情報公開審査会のあり方などについて、三木由希子氏と神保哲生が議論した。

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