第12回のディスクロージャーは森友学園問題をめぐり赤木雅子さんが国を相手に争っていた情報公開訴訟の地裁判決の理不尽さを情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。
いわゆる森友学園問題とは、学校法人森友学園に対し国有地が格安で払い下げられていたことが明らかになり、当時の安倍政権が国会で追及を受けるなど政治問題化したもの。さらに、政府が払い下げの過程で同校の名誉校長を務める安倍元首相の妻、昭恵さんの関与を隠すために公文書を改ざんしていたことが露わになり、問題がさらに拡大したが、今日にいたるまで一人の逮捕者も出ていないため、誰が何のために改ざんを指示したのかなど、事件の真相はまったく明らかになっていない。
さらに、事件が表面化する過程で、公文書の改ざん作業を押しつけられた当時の近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが罪の意識から自殺に追い込まれたため、その後、妻の雅子さんが事件の真相解明を求めて国と争ってきた。
今回の判決は、赤木雅子さんが、近畿財務局が市民からの刑事告発を受けて捜査に着手した検察に任意提出していた文書の開示を求めていた情報公開訴訟で、存否応答拒否、つまりそのような文書が存在するかどうかも明らかにしないという国側の主張を裁判所が認め、赤木さんに対して敗訴の決定を下したもの。
国は文書の存在を認めることによって、捜査機関の捜査に影響を与えかねないことを理由に公開の拒否よりも更に後ろ向きな「文書の存否応答拒否」を主張していた。赤木さん側は既に捜査が終わっていることなどを理由に、その主張の不当性を訴えたが、将来同様の事件が起きた場合にも捜査機関の手の内がばれて捜査に悪影響を及ぼす恐れがあるとする国側の主張を裁判所は全面的に認め、赤木さんの請求を棄却した。赤木さんは直ちに控訴している。
情報公開法や情報公開訴訟に詳しい情報公開クリアリングハウスの三木由希子氏は、今回国が存否応答拒否という対応を取った理由として、文書の存在を認めれば、これまでの経緯からしてその文書の非公開を正当化することが難しくなることを恐れたためとの見方を示す。判決文も最初に結論ありきで、それと辻褄を合わせるような理屈づけが行われているように見えると三木氏は語る。
明らかに不当な廉価で国有地が首相や首相の妻が関与する学校法人に払い下げられ、またその過程で首相の妻の関与を隠すために公文書の大々的な改ざんまで行われていたことが明らかになっていながら、誰も責任を取らないばかりか誰が改ざんを命じたのかなど事件の真相を明らかにすることができないのは、情報公開法や公文書管理法があっても、事件が政治銘柄となった瞬間に裁判所が真相の究明を妨げるような動きをするからに他ならない。
真相究明に不可欠な情報開示を妨げる今回の判決がいかに理不尽で政治的な打算に満ちたものかを、三木氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。