リベラルに復活の目はあるか

マル激・トーク・オン・ディマンド マル激・トーク・オン・ディマンド (第705回)

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公開日 2014年10月11日

ゲスト

上智大学国際教養学部教授

1970年東京都生まれ。93年東京大学文学部卒業。95年英オックスフォード大学哲学・政治コース卒業。2003年米プリンストン大学大学院博士課程修了。学術博士(政治学)。著書に『戦後日本の国家保守主義』、共著に『民主党政権失敗の検証』、『グローバルな規範 / ローカルな政治 民主主義のゆくえ』など。

著書

概要

 民主主義の命綱ともいうべき言論を封鎖して、どうしようというのか。
 朝日新聞の従軍慰安婦報道をめぐり、依然として活発な論争が続いている。今週は朝日新聞が設置した第三者委員会が発足し、最初の会合が開かれている。
 この問題については、いろいろな考えや主張があって当然だが、いずれにしても議論を戦わせることはいいことだ。熟議を通じて社会全体として問題への理解が深まるからだ。
 しかし、どうもわれわれ日本人は、民主主義の下でどこまでが許されるかの線引きをすることが、あまり得意ではないのかもしれない。活発な言論は大いに結構だが、それが他者への威嚇や脅迫にまでエスカレートすれば、むしろそれは自ら言論の自由を放棄しているのと同じことになる。
 朝日新聞の従軍慰安婦報道に関わったとされる2人の記者が教鞭をとる2つの大学に対して、何者かが脅迫状を送りつけるという事件が起きていたことが明らかになった。ターゲットにされたのは、帝塚山学院大学と北星学園大学で、いずれも元記者を辞めさせないと、爆弾を仕掛け、学生に危害を加えるといった内容のあからさまな脅迫だった。
 ところがどうも、この事件に対する社会、とりわけ「リベラル」と呼ばれる陣営の反応が、あまり芳しくない。一部で有識者らが抗議の集会などを開いてはいるが、社会全体としてこのような暴挙を許してはならないという機運が、必ずしも盛り上がっていないように見える。実際、今週の国会で安倍首相が朝日新聞の従軍慰安婦報道を批判する答弁を行っているが、元朝日新聞の記者が勤務する2つの大学に対する脅迫事件については、まったく言及がなかった。
 上智大学国際教養学部教授で政治学者の中野晃一氏は、朝日新聞に代表されるリベラルと呼ばれる勢力は、サッチャー・レーガン政権に代表される新自由主義の台頭に呼応する形で、1980年代の中曽根政権以来、弱体の一途を辿ってきたと指摘する。そして、2001年からの小泉政権時に、その弱体化が決定的なものになった。旧社会党勢力は駆逐され、自民党内のリベラル勢力ですら、政治力を失った。組合は正社員の利益団体に成り下がり、メディアの中でも比較的リベラル色が残っていると目されていたNHKは、繰り返しあからさまな政治介入を受けた。そして、今度は朝日新聞が、自爆の側面があったとは言え、権力から厳しい圧力を受けている。
 そのような事態に至った背景として、中野氏は、世界的な潮流と同時に、日本国内のリベラルの堕落があったと指摘する。それは、米の核の傘に守られることを是としながら非核や軍縮を主張していたり、正規雇用者中心の労働組合が貧困に喘ぐ非正規雇用の利益を守ろうとしない姿勢などに代表される、正にリベラルの堕落だった。
 しかし、問題はリベラルを衰退に追いやった勢力が、かつての対抗関係にあった保守主義勢力ではなかったことだ。リーズニング(論理)を重んじるリベラルの言説が説得力を失う一方で台頭してきたのは、感情的な言説で世論を釣ることに長けた歴史修正主義だった。戦下での保守対リベラルの対立構図は、グローバル化された世界では「リーズニング」対「感情」の対立構図に取って代わられ、少なくともここまでは、暢気に「話せば分かる」などと考えてきたリーズニング側の完敗に終わっているように見える。
 今や事態は、大学に対する脅迫事件があっても、社会がこれといって危機感を持たないところまできている。このような現状を変える手立てはあるのか。先人たちが大切に守ってきた言論の自由などの基本的な人権を、このままわれわれはドブに捨てることになるのか。ゲストの中野晃一氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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