2013年12月28日
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靖国参拝とアベちゃん問題の深刻さ

東浩紀氏(哲学者)
ニュース・コメンタリー (2013年12月28日)

安倍晋三首相が12月26日、靖国神社を参拝した。首相による参拝は2006年8月の小泉純一郎首相以来となるが、尖閣諸島をめぐる日中間の緊張関係が続く中での突然の参拝に、果たしてどのような国益判断があったのかを疑問視する声は多い。
 しかし、どうやら安倍首相にとってこの問題は、もはや国益をどうこうする範疇の問題ではないようだ。要するに、行きたいから行ったということ。前回の政権時、靖国神社を参拝できなかったことを「痛恨の極み」と周囲に語っていたそうだ。
 国のために命を捧げた先人たちを敬うのは、首相ならずとも当然の行為だ。しかし、靖国神社にはA級戦犯が合祀されている。そして、今や公然となったA級戦犯の合祀やその経緯も、東京裁判やサンフランシスコ講和体制を否定する歴史修正主義の立場から秘密裏に行われたものだった。そのような場所に一国の首相が参拝する行為は、日本全体が戦後築いてきた平和国家としての礎を否定するものと受け止められても、反論のしようがない。
 戦勝国が敗戦国を裁く東京裁判に問題があったと考えるのであれば、問題点を検証し、然るべき場でそれを主張すればいい。しかし、東京裁判史観が個人的に受け入れ難いからといって、いきなり首相の座にある人間が、ちゃぶ台返しのような形で靖国神社に参拝してしまうようでは、もはやこれは子供である。
 しかし、安倍首相は日本国民によって正当な選挙と正当な民主プロセスを経て選ばれた、首相である。その首相が理由は個人的な思いからであろうが何であろうが靖国参拝を決行してしまった以上、他国からの反発や疑念をわれわれ日本人全員が甘受しなければならない。
 今回の反発はかなり強そうだ。尖閣諸島をめぐり緊張状態が続く中国や、歴史認識などで大きな溝ができたままの韓国はもとより、今回はアメリカまでが「失望」の意を表明し、EUやロシアもそれに続いている。国際社会全体が、日本の首相のみならず、日本という国の真意や国際感覚、そしてその常識を疑ってかかっている。
 今回の参拝が安倍首相に何らかの勝算があってのことであれば、それを国民や国際社会全体に説明すべきだ。もし、それがないままに行った行為だとすれば、首相の責任はあまりに重い。もはや状況は、「アベちゃんはアベちゃんなんだから、しょうがないよ」では済まされないところまで来ているのではないか。
 日本も世界も頭を抱えるアベちゃん問題を、ゲストで哲学者の東浩紀氏をともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

東 浩紀あずま ひろき
(哲学者)
1971年東京都生まれ。92年東京大学教養学部教養学科卒業。99年東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。東京大学客員助教授、早稲田大学教授、東京工業大学特任教授などを歴任。2012年より株式会社ゲンロンの代表取締役社長兼編集長を兼務。著書に『セカイからもっと近くに』、共著に『福島第一原発観光地化計画』、『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』など。  
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