2023年04月15日公開

それでもジャニーズ問題を報じないメディアの末期的症状

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 ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長(2019年7月9日死去)による性加害疑惑が英BBCのドキュメンタリーで報じられて以来、これまで沈黙を続けてきた日本の主要メディアもようやくこの問題を報じるようになってきた。しかし、今週(2023年4月12日)に元ジャニーズ・ジュニアの岡本カウアン氏が東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、自身の被害の実態を克明に公表したあとも、日本の民放テレビ局は依然としてこの問題を黙殺している。また、辛うじて会見を報じたメディアも、会見があったのでやむを得ず報道はしたものの、依然として今一つ腰が引けている感は否めないままだ。

 会見で岡本氏は15歳でジャニーズ事務所に入ってから約4年間ジャニーズ・ジュニアとして活動する中で、合計で15回から20回ほど喜多川氏から性的被害を受けたと話し、受けた性行為の内容もかなり克明に描写した。岡本氏が明らかにした被害の実態や、実際の被害者が岡本氏が知る限りにおいても4年間で優に200人は超えるという指摘も衝撃的だったが、より注目されるのが、会見でNHKのディレクターが岡本氏にぶつけた質問だった。

 そのディレクターは「テレビメディア、とりわけ公共放送に勤める者の1人として大変重く受け止めている」とした上で、「もし当時、大手メディアが(性被害の問題を)報じていたら、自身の選択は変わったと思うか。例えばジャニーズに入所すること自体ためらったり、選択は変わったと思うか」などと聞いたのだ。

 岡本氏は冒頭、「日本のメディアは、残念ながらこの問題について極めて報じにくい状況にある。BBCが報じたように、外国のメディアなら取り上げてくれるのではと言われ、この記者会見を受けることになった」と会見に至った経緯を説明していたが、NHKの記者に対しては、「もしテレビが当時取り上げてたら大問題になるはずなので、多分、親も(ジャニーズ事務所には)行かせないと思います。15歳の未成年なので僕の判断だけではできないですし、多分(入所は)なかったんじゃないかなと思います」と答えたのだ。

 喜多川氏による未成年男子への性加害の実態は20年以上前から週刊文春が報じていた。また、被害者やその親から裁判も提起されていた。にもかかわらず、大手の新聞やテレビはことごとくこの問題を黙殺してきた。その結果、岡本氏はこの問題を事務所に入所するまで一切知らなかったという。そしてその間、テレビ局は何事もなかったかのようにジャーニーズ事務所に所属する多くのタレントを出演させてきた。メディアの沈黙が未成年の性被害を助長したことは明らかだと岡本氏は答えたのだ。

 しかし実際に被害を受けた当事者である岡本氏が実名・顔出しで公の場で会見を開いたことで、今度ばかりはさすがの主要メディアも無視するわけにはいかないだろうとの期待は、今回見事に裏切られた。新聞各紙は社会面などで記者会見の内容を報じたが、民放テレビ局はすべて完全に黙殺した。またNHKも一度だけ平日の午後4時という中途半端な時間帯の5分ニュースの中で2分間ほど会見があった事実とジャニーズ事務所側の声明を報じたのみだった。

 直接の加害者である喜多川氏がすでに亡くなっているとはいえ、ジャニーズ事務所は第三者委員会による調査などを含め、事実究明を行うべきではないか。また、北川氏のそのような行為を知りながら黙殺したジャニーズ事務所の幹部や職員の責任も問われるべきだろう。そして何よりも、なぜメディアはこの問題を黙殺してきたのかをきちんと社会に釈明する必要がある。

 岡本氏が会見を行った4月12日以降も、NHK、民放を問わず多くのテレビ番組にジャニーズ事務所所属のタレントが出演している。また、ジャニーズ事務所所属のタレントを起用したCMも当たりまえのようにテレビで流れている。BBCのドキュメンタリーの制作者たちは会見で、数多くの未成年にそのような性加害を与える人物やその人物が立ち上げた事務所が今も日本の芸能界に君臨する状況に強い違和感を覚えたことを指摘している。おそらくそれが普通の感覚だろう。

 その他、アメリカで発生した機密漏洩事件の衝撃と、漏洩した機密情報が露にする、われわれが知らされていないウクライナ戦争の現状について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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