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2023年10月14日公開

アイドル論から見たジャニーズ問題

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1175回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2024年01月14日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1960年三重県生まれ。77年明治大学付属中野高校中退。85年、共著『週刊本/卒業KYON2に向かって』を出版し注目を浴びる。コラムニストの他、編集者や小説家、脚本家、プロデューサーとしても活躍。著書に『午前32時の能年玲奈』、『TRY48』、近著に『推す力』など。

著書

概要

 かつてアイドル批評家として一世を風靡した中森明夫氏は昨今のジャニーズ問題をどう見ているのか。

 故ジャニー喜多川氏(本名・喜多川擴=2019年7月9日死去)による性加害問題をめぐっては、記者会見におけるNGリスト問題や、NHKの局内で性加害が行なわれていたことが報道されるなど、今なお新たな問題が次々と噴出している。ジャニーズ事務所としては反省と謝罪の意を示しつつも、別会社を設立してみたり、記者会見の質問の操縦を試みたりと、何とかこの急場を凌ぎ、帝国の完全崩壊を未然に防ごうと必死のようだが、そもそも資産1,000億を超える巨大企業を経営の素人の東山紀之氏に委ねるなど、どだい無理な話。記者会見では誤魔化せても、結局のところ弥縫策は早晩馬脚を現すことになる。事件の規模や深刻さを考えれば、どう転んでもジャニーズ時代の終焉は避けられない状況だろう。

 しかし、半世紀あまりの長きにわたり日本の男性アイドル文化を独占し牽引してきたジャニーズ時代の終焉は、日本の芸能・アイドル史から見ても、とてつもなく大きな出来事だと、アイドル批評家でコラムニストの中森明夫氏は言う。中森氏は「アイドルは時代の反映ではなく、時代がアイドルを模倣するのだ」と言うが、もしそうだとすると男性アイドル界を席巻してきたジャニーズ時代の終焉は日本社会にとってどのような意味を持つのだろうか。

 中森氏は何を措いてもまず今は、被害者の救済が喫緊の課題であることを強調した上で、評論家としてはジャニーズという1つの帝国の崩壊に際して、ジャニーズをめぐる批評がほとんど出ていないことに不満を感じるという。ジャニーズについては過去にも元フォーリーブスの北公次氏による『光GENJIへ』などでスキャンダルが暴露されることはあったし、もとよりファンのためのファンブックなどは無数に出版されている。また、ここに来て、BBCの報道をきっかけにジャニー氏による性加害問題の実態や、芸能界全体が抱えるハラスメント体質人権無視などにも目が向きつつある。しかし、その一方で、ジャニーズをめぐる批評というものがほとんど存在しないのは確かに不自然だ。中森氏は、この時期にこそジャニーズ文化とは何だったのかについて批評を加えることが批評家としての自らの役割だと考えていると言う。

 ジャニー氏による性加害が表面化したことでジャニーズ時代が終焉を迎えた形になっているが、中森氏は実際のジャニーズ時代の終わりは2016年のSMAP解散騒動の時に始まっていたと言う。1980年代末は、『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』などのレギュラーで放送されていた歌番組が次々と終了し、90年代はアイドル冬の時代と言われた。元々アメリカのミュージカルのような煌びやかなショーの実現を目指していたジャニー氏の芸能プロデューサーとしての野望は、華やかな衣装に身を包んだ少年隊や光GENJIの曲がヒットし、光GENJIが1988年にレコード大賞を受賞した段階で、ほぼ達成されていたのではないかと中森氏は言う。

 そして、歌番組のなくなったアイドル冬の時代に、普段着のような平易な服装でバラエティ番組にも嫌がらずに出演することで国民的アイドルになっていったのがSMAPだった。彼らはお世辞にもジャニーズの専売特許である歌や踊りが上手いとは言えない、新しいタイプのジャニーズアイドルだったが、そのSMAPが2016年、事務所の退所を巡るトラブルに巻き込まれ、看板番組『スマスマ』内で公開処刑のような形で謝罪をさせられた上に、解散ライブや記者会見もないまま解散に追い込まれ、解散後は事務所を去ったメンバーがあからさまにテレビから干されるなどの憂き目にあった。あの時のSMAPの扱われ方を見て、ジャニーズの若手タレントたちは相当に絶望したはずだと中森氏は言う。あれこそが、飛ぶ鳥を落とす勢いで芸能界を席巻してきたジャニーズ事務所の力にこれまでになかった翳りが見えた瞬間だった。

 しかし、中森氏は帝国が崩壊するときには必ず物語が生まれ、その時こそ帝国の真価が問われると語る。アイドル論としてのジャニーズ問題の意味とその先に来るもの、また70年代のスター誕生から始まる数多のアイドルの隆盛とその社会的な意味などについて、アイドル批評家でコラムニストの中森明夫氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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