2013年8月24日
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遠隔操作ウィルス事件続報
弁護側が無罪性の挙証責任を負わなければならないのか

ニュース・コメンタリ―

 遠隔操作ウイルス事件が、下手をすると弁護側が被告の無罪性の証明を要求される異常な事態に陥る様相を呈し始めている。
 この事件で逮捕、起訴され勾留中の片山祐輔被告の弁護人の佐藤博史弁護士らは、8月22日第四回公判前整理手続後に会見し、片山氏の犯人性を証明する証拠が依然として検察側から一切出てこなかったと語った。
 佐藤氏によると、今回検察側が明らかにした証拠は2つで、片山氏が雲取山にUSBメモリを埋めた日付を「12月1日頃」とし、江の島の猫の写真を撮ったのは「3回だけに限らない」と回答しただけだったと言う。
 いずれも片山氏が犯人であることを証明する証拠としては不十分なものばかりで、弁護側の主張に対する有効な反論を行わないまま半年以上も勾留が続き、近親者との接見も禁止されている現在の状況を、佐藤氏は厳しく批判した。
 複数の掲示版などに脅迫や殺人予告などが書き込まれたこの事件では、過去に誤認逮捕された4人のパソコンに遠隔操作ウイルスの痕跡が見つかったために、彼らのパソコンが外部から遠隔操作されていたことが明らかになり、彼らが犯人でなかったことが明らかになった。しかし、片山氏については、派遣先の会社のパソコンから遠隔操作ウイルスの痕跡が見つかったために、ウイルスを他人のパソコンに埋め込んだ犯人であると検察は主張している。片山氏のパソコンも遠隔操作をされていたと考える「合理的な疑いの余地」はないのか。
 この点について検察は、もし弁護側が片山氏のパソコンが遠隔操作されていた可能性があるというのなら、その証拠を出すよう要求したと佐藤弁護士は話す。
 本来、近代裁判では弁護側が被告の犯人性に合理的な疑いを差し挟む余地の存在を証明すれば、被告は無罪となることになっている。今回の検察が要求した「遠隔操作されていた証明」は弁護側に「無罪性の証明」を求めているに他ならない、近代司法上はあり得ない要求だ。本来は検察が片山氏は遠隔操作されていなかったことを証明しなければならないのではないか。
 そもそも遠隔操作ウイルスがあるパソコンから見つかった時、そのパソコンが遠隔操作されていなかったことの証明は可能なのだろうか。
 弁護側はこれまでも、起訴前の勾留理由開示請求をしていた時から、片山氏の無罪を立証する証拠を先行して提示してきた。しかし、検察側はこうした主張には一切有効な反論をできていないと佐藤氏は言う。この裁判が、弁護側による無実性の証明が問われる裁判になる恐れが現実のものとなってきてはいないだろうか。
 検察による明確な犯人性の証明がないまま片山氏の勾留期間が半年を超えた遠隔操作ウィルス事件について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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