2011年12月13日公開

コスト委は評価するが基本問題委は運営に疑問・大島堅一立命館大学教授に聞く

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ゲスト

1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業。94年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。97年同博士課程単位取得退学。経済学博士。97年高崎経済大学経済学部助教授などを経て、08年より現職。著書に『再生可能エネルギーの政治経済学』など。

著書

司会

概要

 福島第一原子力発電所事故を受け、発電コストやエネルギー基本計画の見直しを行う識者委員会の委員を務める立命館大学の大島堅一教授は、原発のコストについては概ね正当な試算ができたが、エネルギー基本計画を見直す作業については、委員会の運営に多いに疑問があるため、これまで意味のある成果が上がっていないと語った。
 来年のエネルギー政策に向けて識者による委員会が電源種別の発電コストの試算を見直す「コスト等検証委員会」は、13日の会合で、原発や再生可能エネルギーのコスト試算を発表した。これによると、原発についてはこれまでは計算に含まれていなかった廃炉や事故の損害賠償費用などが新たに発電コストに加えられたため、原発の1キロワット時あたりの発電コストは8.9円〜9.5円(70%稼動時)と試算された。これは2004年の試算の5.9円のほぼ倍にあたるもので、これまで原発が他の電源種よりも安いとされてきた根拠が崩れた格好だ。
 その一方で、再生可能エネルギーについては現状では太陽光が30.1円〜45.8円、風力が9.9円〜17.3円と原発や既存の火力発電よりも高いコストが算出されたが、同時に2030年頃から技術革新によって再生可能エネルギーの発電コストは急速に下がるとの試算も発表された。
 こうした試算について早くから原発のコストが従来の政府の試算よりも高いことを指摘したきた大島氏は、「ところどころ異論はあるが、概ね必要なコストは含むことができた。フェアな議論ができたと思う」と、委員会の結論に一定の評価を与えた。
 しかし、大島氏がコスト等検証委員会と併せて委員を務める経産省の「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」については、「議事運営が一方的で全く議論が深まっていない。本当に議論をさせる気があるのか疑問」と、委員会のあり方に強い不満をあらわにした。
 コスト等検証委員会が国家戦略室内に設けられた環境エネルギー会議の管轄下にあるのに対し、エネルギー基本計画を見直す総合資源エネルギー調査会基本問題委員会はこれまでの原子力政策を推進してきた経産省が運営する。25人の委員のうち15人が原発推進派を見られ、過去7回の会議では各委員に好きに主張を述べさせるが、ほとんど議論らしい議論は行って来なかった。先週の委員会の場で、会議を運営する経産省の事務方から突如「論点整理」なる資料が提出され、その中ではこれまで各委員が勝手に述べてきた意見が、そのままこれまでの議論として羅列されていたため、一部の委員から強い反発が起き、会が紛糾していた。
 政府はこれらの委員会の提言や答申を元に、関係閣僚からなるエネルギー環境会議で政府としての最終案を取りまとめ、来年6月をめどに新しいエネルギー基本計画と原子力大綱を決定するとしている。

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