2013年12月28日
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特定秘密保護法は可決したのか

東浩紀氏(哲学者)
ニュース・コメンタリー (2013年12月28日)

参院の国家安全保障特別委員会は12月5日、特定秘密保護法案を賛成多数で可決し、同法案は翌6日深夜の参院本会議で可決・成立したとされているが、実は公式の記録では委員会での採決は行われていないことになっている。
 怒号が行き交う委員会室で、多数の野党議員が議長席を取り囲む様子は、テレビでも繰り返し放送された。あの混乱の中で与党議員から採決が発議され、委員長が採決を宣言、自民・公明議員が起立したことで賛成多数で法案は可決したとされる。
 しかし、参議院の委員会会議録には、自民党の石井浩郎議員の採決の動議も記録されていないし、その後採決が行われたことも記されていないのだ。
 会議録では、委員長が石井議員を指名した後、全ての発言は「・・・・・・(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)」とのみ書かれている。聞き取れなかったのだから仕方がないと思われるかもしれないが、参議院規則では会議録の内容が実際の発言と異なる場合、発言者は会議録の訂正を求めなければならないことになっている。
 参議院規則第156条には「会議録には、速記法によつて、すべての議事を記載しなければならない」と定められており、その会議録を正式な記録と定めている。また、同158条には、会議録の内容を訂正したい場合は、「発言した議員は、会議録配付の日の翌日の午後5時までに発言の訂正を求めることができる」と定められている。
 当初から一部のメディアの間で、この問題が指摘されていたが、その段階の速記録は未定稿であり、正式な会議録とはなっていなかった。しかし、正式な会議録の確定稿が配布され、その翌日の午後5時までに訂正を求めなかった以上、現在の会議録が唯一の正式な記録である。
 その後、秘密保護法案は同委員会で可決されたことを前提に本会議に上程され、可決・成立している。しかし、後の時代に本当にそのような採決が行われ、賛成多数で可決したかどうかを確認しようとしても、正式記録でその裏付けを見つけることはできないのだ。
 映像は正式な記録ではないが、当時の映像をあらためて見返してみても、会議録同様、石井議員の採決の発議も、採決を宣言する委員長の発言も、全く聞き取ることはできず、採決の存在を確認することはできない。
 正式記録にも載っていない採決が、本当に特別委員会で行われたのだろうか。秘密保護法は本当に可決しているのか。記録にも載っていない法案を、可決したものとしてしまっていいのか。
 哲学者の東浩紀氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

東 浩紀あずま ひろき
(哲学者)
1971年東京都生まれ。92年東京大学教養学部教養学科卒業。99年東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。東京大学客員助教授、早稲田大学教授、東京工業大学特任教授などを歴任。2012年より株式会社ゲンロンの代表取締役社長兼編集長を兼務。著書に『セカイからもっと近くに』、共著に『福島第一原発観光地化計画』、『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』など。  
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