精神科病院で身体拘束が世界一多い日本で遂に違法判断が出たことの意味
杏林大学保健学部作業療法学科教授
情報公開の視点からさまざまな社会問題を考えるディスクロージャー&ディスカバリー。第9回の今回は、ビデオニュース・ドットコムがこれまで繰り返し取り上げてきた精神医療分野における情報公開の現状と課題を取り上げる。
2023年2月、東京都八王子市の精神科病院滝山病院で患者に対する虐待や違法な身体拘束が行われていたことが明らかになり、逮捕者まで出す事態となった。精神科病院に入院患者のほぼ半数が、本人の同意なしに事実上強制的に「医療保護入院」させられている日本では、精神医療の実態は長らくブラックボックスの中に閉ざされてきた。しかし、死亡事故にまでつながる虐待や暴行、長期の身体拘束などが相次いで明らかになる中で、精神科病院の運営実態の透明化は喫緊の課題となっている。
ところが、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏は、精神医療分野の情報公開は2010年代からむしろ後退しているという。 2017年に毎日新聞によって50年以上にわたって長期収容された患者の数が全国で1,700人を超えている実態が明らかになると、これまで一般的に公開されていた精神保健福祉資料(通称・630調査)が、病院の利益に悪影響を与える恐れがあるとの理由から、軒並み非公開となってしまった。毎年6月30日に行われる630調査は、厚労省が各都道府県・政令市に対して精神科病院の実態を調査するよう依頼するもので、精神医療の実態を知る上で数少ない情報源の一つだったが、これが非公開になったことで、精神医療の実態が以前にも増して見えにくくなり、当事者である患者やその家族も、それぞれの病院の医療サービスの質を判断することが難しくなってしまった。
元々、精神医療の実態は患者と医療提供者の閉鎖された空間の中で、何か問題が起きていてもそれが明るみに出にくい性格を持っている。三木氏は内部の問題を積極的に開示することで、精神医療が直面する問題を社会のなかで解決していくことが必要だと語る。ジャーナリストの神保哲生と三木由希子氏が精神医療における情報開示の問題点などについて議論した。