国境なき医師団の村元菜穂氏にガザの現状を聞く

国境なき医師団 ロジスティシャン
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東京大学文学部卒業。同人文社会研究科宗教学・宗教史学専攻修了。情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科修士課程、博士課程修了。博士(情報学、2023年)。専門はサイバーセキュリティ。笹川平和財団研究員を経て2023年より現職。共著に『SNS時代の戦略兵器 陰謀論』。
今や陰謀論は「トンデモ話」として笑っていられる場合ではなくなってきている。
特にサイバー空間における陰謀論と偽情報の拡散は、単なるサブカル的現象を超え、各国の選挙結果や国家の安全保障を脅かす重大な問題となっている。SNSの普及によりディスインフォメーション(意図的な誤情報)を広めることが容易になったことを受けて、ロシアや中国といった権威主義国家が、民主主義の国々の政治的混乱を助長するためにこれを戦略的に利用しているからだ。
陰謀論の影響としては、2021年の米国でも大統領選挙に不正があったとの陰謀論に触発されたトランプ支持者たちが連邦議会議事堂を襲撃し一時的にこれを占拠するという事態にまで発展し5人の死者を出したほか、ブラジルでも選挙結果に不満を持つボルソナロ大統領の支持者が議会を襲撃している。ドイツでは現職の警察官や軍人を含む陰謀論を信じる大規模な武装組織が国家転覆を企てたとして一斉摘発されるなど、具体的な事件も相次いで起きている。
実際ロシアは人海戦術的ボット運用とハッキングを組み合わせた情報操作を行っていることがわかっているし、中国も国営メディアと軍・情報機関が一体となって情報戦を展開している。
民主国家は少なくとも建前上は言論の自由を保持しなければならないため、むやみにSNS上の言論に介入することができず、こうした攻撃に対して十分に有効な対応ができていない。これまで日本語の壁に守られていた日本も、生成AIの発達によって誰でも違和感のない日本語が書けるようになったことで、今や欧米の国々と同様のリスクに晒されている。
長迫氏は、米国が2016年の大統領選挙にロシアの介入を許したことの反省の上に立ち、2017年に選挙制度を安全保障上の重要インフラに指定した上でサイバーセキュリティ対策を強化している事例を紹介した上で、日本も2022年の安全保障戦略に認知戦対応を盛り込むなど、遅まきながら対応に乗り出してはいるが、その体制整備や人材育成が遅れていることを指摘する。
近年のサイバー空間における陰謀論の拡散とその安全保障上の影響、及び各国の対応策や日本の現状に関する理解促進などについて、サイバーセキュリティが専門の長迫智子・情報セキュリティ大学院大学客員研究員にジャーナリストの神保哲生が聞いた。