リオの精神は死んだのか

マル激・トーク・オン・ディマンド マル激・トーク・オン・ディマンド (第586回)

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公開日 2012年07月07日

ゲスト

国学院大学経済学部教授

1950年東京都生まれ。74年大阪大学理学部生物学科卒業。89年京都大学大学院農学部農学研究科修了。農学博士。目白学園女子短期大学生活科助教授などを経て95年より現職。93年JACSES(「環境・持続社会」研究センター)参加、2003年より代表理事を兼務。著書に『地球文明ビジョン「環境」が語る脱成長社会』、共著に『共存学:文化・社会の多様性』など。

概要

 20年前のリオ地球サミットの熱気や楽観論は一体どこに行ってしまったのだろう。

 日本が原発の再稼働問題や増税法案をめぐる国会の混乱に揺れる6月下旬、ブラジルのリオデジャネイロで世界中の政府関係者や産業界、市民団体の代表者ら総数4万人以上の人々が集まる一大イベントが開催された。20年前に同地で開催されたリオ地球サミット(国連環境開発会議)にちなんで「リオ+20」(国連持続可能な開発会議、6月20〜22日)と呼ばれ、リオサミットやそれ以降に合意された国際的な貧困撲滅や環境保全の取組みの成果などが検証されたほか、将来の目標などが話し合われた。

 しかし、20年前の地球サミットの熱気は既に過去のものとなり、さしたる成果がないまま閉幕することとなった。国際NGOなどを中心とした市民の側からは早くも「失敗」だったとの批判が出ている。

 1992年と2012年の両方の会議に参加した国学院大学の古沢広祐教授は、20年前と比べて今回の会議を取り巻く人々の熱気は10分の1に萎んでしまったと語る。1992年の地球サミットでは、半世紀に及ぶ冷戦が終わり、平和を取り戻した世界で人々はようやく環境や人権、途上国の貧困など地球的課題に向き合うことが可能になったというのが、サミットに参加した人々の共通認識だった。会議でも「環境と開発に関するリオ宣言」が採択され「持続可能な開発」というキーワードの下、多くの行動計画がとりまとめられた。また、会議期間中に「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」の署名が開始されるなど、リオ・サミットは人類にとって環境や開発に関する国際的な取組みにおけるターニングポイントとなるはずだった。

 しかし、その後の世界の20年は、明らかにリオで多くの人が期待したようなものにはならなかった。冷戦の終結で軍事費の大幅削減が可能になり、それが「平和の配当」として、貧困や環境問題解決のために使われることが期待された。確かに1998年頃までは軍事費はある程度減少傾向にあったが、その後増加に転じ2011年には1兆7275億ドルに達している。これは冷戦末期を上回る金額だ。

 世界全体のCO2排出量は1990年から2010年の間に50%近く増加している。貧困問題については、東アジアを除き2000年のミレニアム・サミットで合意された「1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年比で半減させる」目標すら達成できていない。

 今回の「リオ+20」では持続可能な開発を実現するための方策として、環境に配慮した生産や消費を奨励する「グリーンエコノミー」の促進や国連の制度改革などが提案されたが、参加国間の対立が根深く、ほとんど具体的な成果は得られなかった。グリーンエコノミーという考え方でさえ、先進国と途上国の間には大きな認識の開きがあることが明らかになった。

 20年前のリオサミットで合意された約束はほとんど実行されず、冷戦が終結しても世界には依然として深い対立が残ったまま、われわれは地球規模の様々な問題に対して有効な手立てを打つことができていない。同時に気候変動や生物多様性問題は深刻の度合いを増し、もはやポイント・オブ・ノーリターン(元には戻ることが不可能な地点)を超えてしまったとの悲観論も聞こえる。貧困問題も解決からほど遠い。

 更に日本には、それ以前の問題が山積し、政府の指導者にも一般市民の間でも、地球規模の問題を真剣に考える余裕すら残っていないようにさえ見える。

 リオの精神は本当に失われてしまったのか。リオ以降、地球では何がかわり何が変わらなかったのか。人類はこのまま地球規模の問題に手をこまねいたまま、破局への道を突き進んでいくのか。国連に代わる新たな合意形成の方法はあり得るのか。「リオ+20」から帰国された古沢氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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