2016年07月08日公開

参院選の真の争点・財政政策

バラマキによる財政の悪化には警戒が必要

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ゲスト

1970年奈良県生まれ。93年大阪大学経済学部卒業。99年東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程修了。経済学博士。カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員、財務省財務総合政策研究所主任研究官などを経て、09年より現職。専門は財政学、公共経済学。著書に、『三位一体改革 ここが問題だ』、『日本の財政をどう立て直すか』など。

著書

司会

概要

 安倍首相はこの選挙にアベノミクスの継続に有権者の信を問うと語っている。慶応義塾大学の土居丈朗教授に、ジャーナリストの神保哲生が、この選挙の真の争点を、経済政策、とりわけ財政政策の分野で聞いた。

 土居氏は安倍首相の「アベノミクスのエンジンのギアを2段、3段上げて噴かしていきたい」という発言の意味を、金融緩和が継続し大型補正を含む公共事業が積極的に推進されると理解すべきだと語る。

 アベノミクス初期では金融緩和効果で円安が進み、輸出関連企業を中心に企業利益が増えた。その点は評価すべきだと土居氏は言う。実際、その成果で税収も増えたが、その後金融緩和の効果が薄れてくると、再び為替は円高に振れ、経済成長にもブレーキがかかっている。

 そうした中で「アベノミクスのエンジンを噴かす」ためには、大型の補正を組み、第二の矢である公共投資を拡大していくしかない。既得権益に切り来なければならない第三の矢の成長戦略は容易ではないからだ。

 その場合に、注意が必要になるのは、同じバラマキでも、商品券のような一過性の効果しか期待ができない公共事業ではなく、次の経済成長につながる投資になっているかどうかだと土居氏は言う。

 また、それでも公共事業の拡大が続いた場合、自民党が掲げる「将来世代につけを回さない財政」を本気で実現するつもりがあるのかが問われることになると、土居氏は言う。消費税増税を先送りする一方で、大型補正を組み、公共事業を拡大させていけば、当然財政は大幅に悪化する。

 マイナス金利の下、今は低い金利で国債が発行できるが、そこで調子に乗って借金を増やしていくと、いずれ日本がデフレから脱却しインフレに転じた時、財政負担がうなぎ上りになる恐れがある。その時は、借金の返済が優先されるため、社会保障費は大幅に縮小される。消費税増税を延期して、財政出動をするということは、それを覚悟しなければならないことを意味すると、土居氏は指摘する。

 どの政党も選挙で不利になる増税など謳いたくないし、痛みの伴う改革も提案はしにくい。そのためどうしても選挙公約は綺麗ごとの羅列になりがちだ。

 しかし、そうした中で土居氏は、次世代につけを回さない気がある政党や候補者を見分ける方法として、他力本願な政策を訴えているかどうかを見極めることを提唱する。

(聞き手 神保哲生(ビデオニュース・ドットコム))

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