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2020年07月11日公開

日本経済はコロナと五輪ショックを乗り切れるのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1005回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年10月11日23時59分
(終了しました)

ゲスト

慶応義塾大学総合政策学部教授

1963年東京都生まれ。87年慶應義塾大学文学部卒業。89年慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了。93年コロンビア大学経済学部博士課程修了(経済学博士)。国際通貨基金(IMF)エコノミスト、慶應義塾大学総合政策学部助教授を経て2006年より現職。11年〜16年日本銀行政策委員会審議委員。著書に『仮想通貨時代を生き抜くための「お金」の教科書』、『元日銀審議委員だから言える 東京五輪後の日本経済』など。

著書

概要

コロナ禍に見舞われるはるか以前から、日本経済には危険信号が灯っていた。アベノミクスの下で7年にわたる金融緩和によってもたらされた円安のおかげもあって、株価は2万円台を維持し不動産価格も上昇するなど、表面的には日本経済は好調であるかのように言われてきたが、その実は株価は日銀や年金基金による膨大な買い支えによってもはや経済の実態を反映しない歪なものになっていたし、不動産も特に都心の一等地などでは局所的にバブル化の懸念が囁かれていた。そして何よりもアベノミクスの要諦であった2%のインフレターゲットというものが一向に達成できず、金融緩和と同時に行われた日銀の国債の大量の買い付けによって財政規律も失われていた。そうしたかなり危うい状況下で、日本が最後の心の支えにしてきたのが、2020年の東京五輪だった。

安倍政権日銀総裁黒田東彦氏を指名し大々的にアベノミクスの旗を掲げた時期(2013年2月)と、2020年の東京五輪の開催の決定(2013年9月7日)時期はほぼ重なっていることには重要な意味がある。日本は大胆な金融緩和に加え、五輪のためのインフラや環境整備の名目で大量の公共支出が正当化され、また民間も五輪需要を当て込んだ積極的な投資が行われてきた。端的に言えば、あまり期待できるニュースがない中で、日本経済はこの7年間、アベノミクスによるインフラ期待と五輪特需期待だけで回ってきたといっても過言ではなかった。

ところが今や一向に達成できないインフレターゲットに加え、データを誤魔化してまで辛うじて上昇していたことになっていた賃金が実はまったく上がっていなかったことまで明らかになると、アベノミクスの神通力は完全に消え失せてしまった。それどころか、一時は「黒田バズーカ」だの「異次元」だのと囃された金融緩和が、今やその出口シナリオさえ描けないままその副作用にのたうち回っているのが実情だ。

そこで最後の期待が集まっていたのが五輪特需と言われる五輪の経済効果だった。しかし、元日銀の審議委員で慶應大学総合政策学部教授の白井さゆり氏は、20兆と見積もられている五輪の経済効果のうち日本は既に16兆を消費済で、もともとそれほど多くの弾は残っていないのが実情だという。

しかも、本来であれば再来週にも開会式を迎えるはずだった東京五輪が、新型コロナ感染症の蔓延によって、今のところは来年7月まで延期されることになった。現時点では「延期」とされているが、現実問題としてまだ世界中にこれだけコロナが広がり続ける中、来年の夏までに世界中の国々が各競技で五輪予選や選考会を開いて代表を決めることなど到底不可能だろう。一応、来年開催の是非については今年10月中に正式決定するというのが現時点でのIOCの方針のようだが、肝心のコロナの方が、アメリカでも依然猛威を奮い続け、発展途上国ではいよいよこれから本格的な流行が始まろうかという段階にあることを考えると、普通に考えて中止は避けられない。五輪頼みだった日本経済が、五輪という目標を失った時、一体何が起きるのか。

白井氏はまた、金融破綻による需要の落ち込みが世界経済全体の足を引っ張る形となったリーマンショックと比べて、今回のコロナに起因する経済への打撃は、需要と供給の両方が落ち込んでいることから、そこからの立ち直りは容易ではないとの見方を示す。リーマンのように一時的に需要が落ち込んだ場合は、中央銀行が資金を注入することによってこれを買い支えることが可能だったが、今回は売り上げの下がった事業者に一時的に資金を注入すれば済むという話ではない。最終的には客や売り上げが戻らない限り、経済は回復しない。

外食産業のようにコロナが恐くて一時的に客が利用を控えているものもあるが、例えば今回のコロナで国際会議などは遠隔で行うのがデフォルトになってしまった結果、これまで当たり前のように利用されていた国際会議場や飛行機、ホテルなどの旅客業はもう二度と以前のような状態には戻らない可能性も高い。

それは大学にも言えることだ。リモート授業が当たり前になると、通学という概念も不要になるし、受講者数に制限を設ける必要もなくなり、大学から定員という概念が消えてしまう可能性もある。その分野のもっとも優れた講義を世界中のどこからでも受講できるようになった時、これまでの大学の序列などが意味を持ち続けるのかどうか。世界最高の大学講義が日本にいながらにして受けられる、などと聞くとバラ色の未来のようにも思えてしまうが、そうなったときの大半の大学の経営や経済への影響がどうなるかを考えると、そう悠長に構えてばかりもいられそうにない。

そもそもコロナが来る前からやばかった日本経済が、コロナの襲来によって、一体今どんな状態になっているのか。また、そもそも五輪後が危ないと言われつつも、7年間五輪頼みでやってきた日本にあって、その五輪の中止がほぼ確定的となった今、その影響はどのような形で出るのか。

白川総裁と黒田総裁の2人の総裁の下で日銀の審議委員を5年にわたり務め、現在は大学教員のかたわらで企業のESG化(ESG=Environment, Social, Governance)の啓蒙に積極的に関わる白井氏に、コロナと五輪の延期、あるいは中止による「五輪ショック」の日本経済への影響と、この先、日本が経済的に生き残る道としてどのような選択肢があり得るのかなどを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

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