2006年7月7日
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それでも通信と放送は融合する

松原聡氏 (『通信・放送の在り方に関する懇談会』座長)
マル激トーク・オン・ディマンド 第275回

 通信と放送の融合が叫ばれて久しい。しかし、業界の抵抗や制度上の問題のために、実態としての融合は必ずしも進んでいない。ブロードバンド普及率で世界一を誇る日本でも、まだ消費者はインターネット時代の果実をフルに享受できていないのが実情だ。
 その問題に真正面から手を付けようとしたのが、竹中平蔵総務大臣の私的諮問機関『通信・放送の在り方に関する懇談会』だった。竹中氏より同懇談会の座長に指名された松原聡東洋大学教授は、光ファイバーが日本の隅々まで張り巡らされる2010年までに、通信と放送はいやがおうにも融合することになるが、現在の日本では、制度の面でも法整備の面でも、まだ融合の果実を市民社会に還元できるだけの体制が整っていないと言う。
 そうした問題意識の上に立ち、懇談会は今年1月から精力的に議論を進め、このたびNHKのチャンネル削減、伝送会社の子会社化などが骨太の方針には盛り込まれた。これは大きな成果だが、その一方で、もう一つの懸案事項だった、NTTの持ち株会社制の廃止や、放送局のソフトとハードの分離については、業界や業界の意向を受けた与党の抵抗が強く、今回は見送らざるを得なかったと松原氏は残念がる。
 確かに、日本中に光ファイバー網が整備され、それを通して電話も放送もインターネットも利用できるいわゆる「トリプルプレー」が実現すれば、通信面でもコンテンツ面でも、現在は考えられないような様々な新しいサービスの実現が可能になる。しかし、これはNTTやNHKに代表される通信・放送業界の既得権益の根幹に関わる問題ともなるため、抵抗圧力も自ずと強くなる。そうした抵抗の中で、果たしてどれだけ真の消費者利益を追求できるかが鍵となると、松原氏は言う。
 今週は、そもそも通信と放送の融合とは何なのかに始まり、それによって消費者はどのようなメリットを得るのか、そしてその変革には誰がどのような理由で抵抗しているのか、新しい通信・放送環境の中で果たして報道の公共性は担保できるのかなど、「通信と放送の融合」をめぐる基本的な問題点を、2010年以降の日本の通信・放送市場のグランドデザインを作成した懇談会の座長を務める松原氏とともに考えた。

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