2006年7月20日
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日銀がゼロ金利を解除した本当の理由とは

岩田規久男氏(学習院大学教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第277回

 日銀がいわゆるゼロ金利状態に終止符を打ち、5年4ヶ月ぶりに金利を復活させた。
 実際は1998年から事実上ゼロ金利が続いていたため、ゼロ金利時代はほぼ8年続いたことになる。
 実際にこれだけ長期にゼロ金利が続いた国は、先進国では有史以来前例がない。大恐慌時代のアメリカでも、一旦は金利はゼロに近いところまで下がったが、3年ほどで上昇に転じている。この長きにわたるゼロ金利という時代を我々はどう考えればいいのか。
 岩田規久男教授は、まずそれだけバブルの後遺症が大きかったことを認識する必要があると言う。ゼロ金利は金融機関を救うための措置だとか、不良債権を抱えた死に体企業を延命させるための措置だなどとの批判があるが、もしそこまで金利が下がっていなければ、バブルの後遺症は更に厳しいものになり、日本経済は未だに立ち直れていない可能性が高いというのだ。
 しかし岩田教授は、現時点での利上げはまだ時期尚早だと主張する。日本経済がとりあえず何とかデフレを脱した状態にあるのは、米中の好況と円安による輸出の好調など、外的な要因に請うところが大きい。しかし、米経済の先行きに不安が出ている上、中東情勢の不安定化に端を発する原油高のリスクも顕在化している。しかも、ここで日本の金利が上がり始めれば、為替が今よりもより円高に振れる可能性が高まる。そうなれば、ここまで満身創痍だった日本経済を辛うじて引っ張ってきた輸出にも悪影響が出るかもしれない。本当に日本経済がまだ独り立ちできるかどうかについて、岩田教授ははなはだ心もとないと不安を隠さない。
 ではなぜそのような不透明な時期に日銀は利上げに踏み切ったのか。その動機を岩田教授は問題視する。インフレを抑えることをその最重要機能と考える日銀のメンタリティでは、ゼロ金利はまさに「異常」な状態ということになる。異常な状態は一刻も早く正常に戻す必要がある。その「異常」対「正常」の単純な論理の中で日銀は無理矢理利上げに踏み切っているのではないかと言うのだ。そしてメディアもまた、その日銀の論理をそのまま受け入れたかのような報道を繰り返しはいないだろうか。
 実は日銀の金融政策の意思決定を行う金融政策決定会合は、議事録こそ公開されているが、それぞれの発言の主の名前まではわからないようになっている。これだけ国民生活に重大な影響を与える決定を下している機関であるにもかかわらず、その透明性は低く十分説明責任を果たしているとも言えない。当然結果責任を問うことができない。
 岩田教授は、日銀に結果責任を負わせる仕組みを作ることが急務だと言う。そして、その手段の一つとして、インフレターゲットの導入を提唱しているが、インフレ抑制のDNAを持つ日銀は今のところ岩田教授らのこうした呼びかけに応える様子は見せていない。
 それにしても、ようやく終止符を打ったかに見えるゼロ金利時代とは何だったのか、日銀は通貨の番人としての責務を果たせているのか、小泉構造改革とゼロ金利との間にはどのような関係があったのか。ゼロ金利解除の意味を岩田教授とともに考えた。

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