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2007年03月02日公開

骨抜きにされる小泉改革

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第309回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

慶應義塾大学教授

1947年東京生まれ。71年慶應義塾大学法学部卒業後、松下電器貿易に入社。82年東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。プリンストン大学客員研究員、東京工業大学助教授などを経て、92年より現職。専門は政策過程論。著書に『ODAの正しい見方』『癒しの楽器 パイプオルガンと政治』『解体』など。

著書

概要

 日本では時計の針が逆に回ってるようだ。小泉政権の下で断行された数々の「改革」が、安倍政権発足後、首相の指導力の無さと支持率低下の中、次々と覆されている。しかも、それを覆しているのが、かつて首相と戦った自民党内の「抵抗勢力」ではなく、自らの保身に走る官僚たちだというのだ。
 小泉改革の中身を全面的に「善し」とするかどうかはともかく、痛みを甘受して邁進したはずの構造改革が骨抜きになれば、小泉改革が多くの人にとって「痛み損」に終わる可能性すら出てきている。
 小泉-竹中チームの肝いりで進められた政府系金融機関の統廃合が、2月27日に閣議決定され、今国会で成立する見込みだ。この法案は8つの政府系金融機関を、あるものは民営化し、あるものは廃止し、残りを統合させ、最終的に政府が保有する金融機関を一つだけに減らすことを主眼とするもの。現在38人が中央官庁から役員として天下りしている8つの政府系金融機関が、1つに減ることは、官僚の既得権益にもろに影響するため、各省庁とも巻き返しに躍起になっていることは想像に難くない。
 しかし、政府系金融機関の代表格とも言うべき国際協力銀行(JBIC)の解体プロセスをつぶさにウオッチしてきた慶應大学の草野厚教授は、財務省の巻き返しによって、JBICの統廃合を無力化するような動きが公然と行われており、安倍政権はそれを押さえ込むだけの指導力が発揮できていないと指摘する。
 その総裁ともなれば海外では国賓扱いを受け、歴代の財務(大蔵)次官の天下り先として最高位に位置づけられてきたJBICもまた、ODA部門をJICA(国際協力機構)と統合した上で、国民生活金融公庫などとともに、新設される日本政策金融公庫の一部となることが決まっている。しかし、財務省はその統廃合を無力化するために、JBICを子会社として独立させる条項を法案の中に潜り込ませようとしていた。幸い自民党内の「良識派」によってこの動きは押さえ込まれたが、安倍内閣はそのことの意味も、またそのような動きが水面下で行われていたことにすら、気がついていなかった可能性が高いというのだ。
 小泉政権下では、首相の強い決意と竹中平蔵氏の行動力で、抵抗勢力の反対を跳ね除け、日本の政治、経済、社会の中に巣くう数々の既得権益にメスが入った。しかし、「改革」の骨格は決まっても、それを実行に移すための法案の詳細設計は官僚の手に委ねられることになる。官僚たちは、こと自分たちの利害に直結する問題では、法案の文言を微妙に操作したり、法律に様々な専門用語を潜り込ませることで、自らの既得権益の喪失を最小化するための高度なノウハウを持っている。それをマスコミや識者がかなり本気でウオッチしていないと、いかなる改革でも最後は骨抜きになってしまうと、草野氏は危機感を訴える。
 一方、JBICの円借款部門は、国際協力機構(JICA)に統合されることが決まっている。草野氏はODA(政府開発援助)の実施機関が一元化されることになること自体は歓迎するが、その反面、現在の日本のODA政策がさまざまな問題を抱えていることも忘れてはならないと指摘する。特に、97年以降日本の対外援助額は減少を続け、かつては世界一を誇った日本のODAも現在は実質世界第5位にまで落ち込んでいるが、これがGNP世界第二位の経済大国に相応しいODAと言えるのか。
 また、ODAの対象も資源開発を中心とした近視眼的な国益追求の道具のように言われて久しいが、これもまた、日本のODA外交の本来の趣旨に沿ったものなのかどうか、再考が必要だと草野氏は言う。
JBICの解体過程を検証してきた草野氏と共に、JBICに見られる小泉改革無力化の動きと、その背後にあるエリート官僚たちの行動規範、それをより好ましい方向へと向けていくための施策などを考えた。

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