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2023年06月19日公開

このまま海水の酸性化と温暖化が進めば寿司桶の中にはガリしか残らなくなる

セーブアース セーブアース (第9回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年09月19日23時59分
(終了しました)

ゲスト

東京大学大気海洋研究所教授

1972年東京都生まれ。1996年九州大学理学部卒業。2001年北海道大学大学院地球環境科学研究科博士後期課程修了。博士(地球環境科学)。国立環境研究所特別研究員、メーン大学海洋科学部博士研究員、北海道大学大学院地球環境科学研究院特任准教授、同准教授を経て、2023年より現職。共著に『地球温暖化はどれくらい「怖い」か?温暖化リスクの全体像を探る』など。

司会

概要

 環境問題の専門家をゲストに招き、地球環境について考えるセーブアース。第9回の今回は東京大学大気海洋研究所教授の藤井賢彦氏とともに海水の酸性化温暖化が環境や生物にどのような影響を与えているかを議論した。

 2021年8月にリリースされた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書によると、現状のまま積極的な環境対策を講じなければ、2100年までに海水の酸性度(pH)は現状の8.0から7.7以下まで下がるという。藤井氏は沿岸部や北極、南極で海水の酸性化が進みやすいとして、特に魚類や貝などの生物に与える影響が大きいと語る。

 海水の酸性化は大気中のCO2がよりCO2密度の低い海中に溶け出すことによって起きる。本来海水は弱アルカリ性のため、CO2が溶け出しても緩衝作用によって平衡状態が保たれているが、大気中のCO2が増えると消費しきれなかった水素イオンが残り、これが酸性化の要因となる。また緩衝作用によって炭酸イオンが多く消費されることで炭酸カルシウムが作られ難くなるため、殻や骨格をつくるために炭酸カルシウムを必要とする貝やサンゴが特に大きな影響を受ける。

 CO2の増加は酸性化だけでなく水温上昇ももたらす。気象庁が発表している1890年から2020年までの海水温のデータをみると、10年ほどの短期的なスパンでは上昇傾向は見られないが、100年単位で見ると0.6℃上昇していることがわかる。

 藤井氏はこうした酸性化と水温上昇の影響を強く受ける生物の1つとしてサンゴを挙げる。サンゴ礁を形成する事で一般にも馴染み深い造礁サンゴは、年間水温が18℃を下回らない海域を生息域の北限とするがが、藤井氏などの研究によれば、この範囲は現在和歌山県付近にあるが徐々に北上しており、2090年代までに房総半島付近まで到達するという。その一方で、造礁サンゴが耐えられる酸性度の北限も、2010年代の高知県付近の海域から2030年代には日本の海域を出るところまで南下しており、海水温の上昇と酸性化によって南北から挟み撃ちされている状況だ。

 ホタテガイやバフンウニも海水温の上昇や酸性化から大きな影響を受ける。月別の平均でみると今後CO2を大幅削減しない場合、二つの種の生息の上限である23℃を上回る月が数か月に及ぶことになる。また酸性化についても、死亡率や奇形率が上がるアラゴナイト飽和度の1.5という準危険水準を下回る月が数か月に及ぶことになると考えられている。

 藤井氏は現在生じている海の環境問題をわかりやすく示すものとして寿司桶の例をだす。今は寿司桶の中にイクラ、ウニ、アナゴ、ホタテ、ホッキガイ、アワビ、ボタンエビ、ホタテガイ、カニ、マグロといったネタが入っているが、まず温暖化の影響によりサケの生息範囲が変わるためイクラが、そして酸性化によって殻をもつ生物のウニ、ホタテ、ホッキガイ、アワビ、ボタンエビ、ホタテガイ、カニなどが獲れなくなくなる可能性がある。そして乱獲によってマグロやアナゴの漁獲数が減れば、最後に寿司桶の中に残るのはガリのみということになりかねない。

 海水温の上昇と酸性化を食い止めるためには、何よりもまずCO2を大幅に削減する必要があるとして、魚の生息域の変化に応じて養殖魚の種類を切り替えるなど、人間の側の適応が求められると語る藤井氏と環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。

ディスカッション

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