2017年8月26日
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「枝野」対「前原」の代表選が問う保守新党の可能性とリベラルの存在意義

ニュース・コメンタリー (2017年8月26日)

 来たる9月1日に民進党の代表選が行われる。

 枝野幸男、前原誠司という民主党結党時からの生え抜きであり、良くも悪しくも知名度の高い2人による一騎打ちとなったこの代表選は、リベラル路線の枝野と保守路線の前原の路線対立が最大の争点とされている。

 1993年の同期当選で年齢も近く、日本新党時代から新党さきがけ、旧民主党から民主党、そして民進党と、24年間も同じ道を歩んできた両者ではあるが、政治家としてのキャリアを積む中で両者の間に政策や理念の面で差異が生じてきたことは事実だろう。

 しかし、代表が変わったからといって、民進党の議員構成が変わるわけでもなければ、世間の民進党に対する見方が直ちに変わるわけではない。

 この2人による今回の代表選には、政策や理念とは別次元の、今後の政界再編を占う上で、重要な意味がある。それは民主党時代から一貫して党の根底に横たわる基本的な路線問題に他ならない。

 それをあえて「2つの小池問題」と表現してみたい。

 枝野氏は先の参院選で民進党の幹事長として共産党の小池晃書記局長と選挙共闘を実現させ、一人区で野党の統一候補を擁立するなどして一定の成果をあげた実績がある。小池とは同じ東北大学出身で年齢も近く、信頼関係も厚い。もし枝野氏が代表になれば、民進党が共産党との連携を深めることは間違いないだろう。

 一方の前原氏は思想的により保守的ということもあり、共産党との連携を明確に否定した上で、自民党に代わることのできる「もう一つの保守政党」の必要性を訴えている。その意味で、小池百合子東京都知事率いる都民ファーストやその国政版日本ファーストの会と親和性が高く、実際、候補者討論会でも、小池都知事との連携の可能性について含みを持たせた表現を繰り返している。今回の代表選では安倍首相の改憲論には異論を呈しているが、元来、憲法9条改正論者だ。そこに日本維新の会や先に民進党を離党した長島昭久氏や細野豪志らを含めた保守新党の可能性に期待する向きは多いし、実際に民進党内にも高木義明氏らの旧民社党グループ、江田憲司氏の旧みんなの党グループ、松野頼久氏ら旧維新の党グループらを中心に、それを期待する声が少なからずある。

 しかし、この路線は枝野氏を支援する赤松広隆氏らの旧社民党グループや他の民進党内のリベラル・市民派勢力とは明らかに相容れないものだ。

 意味じくもこれまで民主党、民進党を支え引っ張ってきた2人が、常に党の根底に横たわっていた理念的な亀裂の向こう側とこちら側を象徴する存在になっていた形だ。

 経済成長が難しい一方で、グローバル化によって社会の流動化が増す、先進国の多くで保守優勢の傾向が強いが、日本とて例外ではない。そのような昨今の政治状況の下で、もし枝野氏が民進党の代表選に勝ち、自論である共産党との共闘を含むリベラル路線を推し進めた場合、前原氏や氏を支えた党内右派勢力は党を割って出て、新たな保守新党の立ち上げに向かう可能性が高い。しかし、前原氏が勝ち保守路線を突き進んだとしても、リベラル勢力が党を割り、新たな政党を立ち上げる可能性はそれほど高くはないだろう。現行の小選挙区制を中心とする選挙制度は、明らかに小政党に不利だからだ。

 前原氏が代表選に勝てば前原氏は保守路線を取るだろうが、その場合、民進党はこれまでのような路線対立を党内に抱え、内ゲバを繰り返す可能性が高いということになる。また、仮に非自民の保守勢力の結集が実現し保守新党が立ち上がったとしても、その新党は自民党と何がどう違うのかという疑問に答えなければならない。

 その一方で、日本の政治においてリベラル勢力が小さな野党勢力にとどまることになった場合、それが国の針路へどのような影響を与えることになるのかについても、慎重に考えておくべきだろう。民主党が主張してきた情報公開や機会均等、弱者に対するセーフティネットの整備といったリベラルな政策が、他の先進国と比べた時、日本の大きな弱点となっていることは紛れもない事実だ。

 政権を失って以来、党勢の衰退が続く民進党ではあるが、現行の選挙制度が二大政党制を志向するよう設計されている以上、二大政党制の一翼を担う党が政治全体に与える影響を過小評価すべきではない。何年か後に、「今のこの政治状況は2017年の民進党の代表選挙が発端だった」などと泣き言を言わないためにも、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、民進党の代表選の意味を慎重に見極めてみた。

 また、トランプ政権発足以来、大統領の側近中の側近であり政権の思想的支柱の役割を果たしてきたスティーブ・バノンが退任したことの意味を、退任直前に行った雑誌のインタビューから考えた。

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