2017年9月2日
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このままでは前原民進党に期待できない理由

ニュース・コメンタリー (2017年9月2日)

 ともに旧民主党時代からの生え抜きで、元代表と元幹事長の争いとなった民進党の代表選挙は前原誠司氏が枝野幸男氏を破り、新代表に選ばれた。

 前原氏は代表に選出された直後の記者会見で、枝野氏を要職に取り立てる意向を明らかにしたが、代表選が党内の左右対立を際立させる結果となったことは否めない。

 前原、枝野両氏は1993年の日本新党時代に初当選を果たした同期生。その後、さきがけ、旧民主党、民主党と常に行動を共にしてきた同志だ。党内グループとしても前原氏が代表を務める凌雲会に所属し、年齢も近い。個人的にも仲の良い両者の考え方には、それほど大きな開きはない。
 
 しかし、今回は結果的に党内の右派が前原氏を支え、左派が枝野氏を推す構図となった。本人同士の思いがどうであれ、民主党時代から常に党の足を引っ張ってきた民進党の左右対立が、この選挙であらためて浮き彫りになる結果となった。

 この代表選は当初から、党内の主要8グループのうち5グループからの支持を取り付けていた前原氏の優勢が伝えられていた。また、右派主導の前原体制になれば、都議選で抜群の強さを見せつけた小池百合子東京都知事が後ろ盾となっている新党「日本ファースト」との連携や合流実現の可能性が高くなると考え、そのような展開に期待する議員や党員も多かったことから、前原氏の優位は揺るがなかった。

 しかし、菅直人元首相、岡田克也元代表を筆頭に、長妻昭氏、赤松広隆氏、辻元清美氏ら党内のリベラル勢力を代表する面々が一様に枝野氏を支持したことに加え、国会議員票が前原83に対して枝野51と予想以上に僅差となったことなどから、党内の左右対立の深刻さがあらためて印象に残る結果となった。

 また、国会議員票142票のうち、8票の無効票(7票が白票、1票は出馬を模索したが推薦人が足らずに断念に追い込まれた井出庸生衆院議員の名前が書かれていた)があったことが、党内には党の現状に対する不満が燻っている様がうかがえる点も、前原体制にとっては厳しい船出となった。

 しかし、何よりも深刻なのは前原新体制になっても、民進党のアイデンティティがはっきりと見えてこない点だ。前原氏は慶応大学経済学部教授で財政社会学者の井手英策氏を師と仰ぎ、自らの政策スローガン「All for All(すべての人がすべての人のために)」が井手氏の協力の下で作成されたものであることを公言して憚らない。しかし、全面的に政策立案を依存する井手氏との出会いも、2年前のことだったという。来年で議員勤続25周年を迎える前原氏にとって、僅か2年前に知り合った大学教授が推す政策を党のアイデンティティにするというのは、やや付け焼刃感が否めないのも事実だ。

 今後民進党は野党共闘、とりわけ共産党との選挙協力の是非と、日本ファーストや日本維新の会を巻き込んだ保守新党の可能性との狭間で揺れ動くことになるだろう。そのたびに党内の左右対立が見え隠れするに違いない。しかし、選挙戦で前原氏が自ら強調したように、政党は理念と政策が命だ。前原民進党がAll for allに代表される所得の再分配を党の最優先政策に掲げるのではれば、保守新党よりも共産党との政策協調の方が容易いはずだ。少なくとも所得再分配を掲げる政党が保守政党を志向するのは定義上も無理があるのではないか。前原氏や民進党支持者たちは、そのことをどう考えているのだろうか。
 
 現行の選挙制度の下では「寄らば大樹の影」に縋りたい気持ちはわからなくない。現在の民進党議員の多くが、小選挙区で破れ比例で復活当選していることを考えれば、なおさらだろう。小党になればなるほど、比例復活が難しくなるからだ。しかし、かと言ってこのまま同床異夢を続けることは、民進党の利害を超えて、日本のためにならないのではないか。

 相変わらずすっきりとしない民進党のアイデンティティと前原民進党の進むべき道について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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