2008年7月19日
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李明博の韓国はどこへ向かっているのか

木宮正史氏(東京大学大学院准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第381回

 今年韓国では、1998年から続いた金大中、盧武鉉の「進歩」政権の時代が終わり、10年ぶりの保守政権となる李明博政権が誕生した。
 大統領選挙にダブルスコアで圧勝し、続く議会選挙でも与党が過半数を奪還するなど、李明博政権の船出は順風満帆であるかに見えた。自身が財閥系企業のトップまで上り詰めた経歴を持ち、盧武鉉政権下でガタガタになった韓国経済の再建が期待された李政権だったが、政権発足直後から閣僚の不祥事や米国産牛肉の輸入規制の緩和が市民の反発を招き、一時は75%もあった支持率が17%まで急落するなど、気がつけば政権発足から半年も経たないうちに、早くも危機的な状況に追い込まれている。
 そうした中、今週日本の文部科学省が発表した中学校の教育指導要領の解説書の中に、間接的な表現ながら、竹島が日本の固有の領土であると受け止められる文言が入ったことで、韓国では、政府、マスコミ、市民を問わず、激しい抗議の声があがっている。17日には米国産牛肉に反対するデモに集まった市民の一部が、その足で日本大使館に向かうなど、牛肉問題で火がついた韓国の反米ナショナリズムが、竹島問題で一気に反日ナショナリズムに飛び火しかねない様相を呈している。
 しかし、韓国の政治情勢に詳しい東京大学大学院の木宮正史准教授は、竹島問題はそこまで大きな争点にはならないとの見方を示した上で、この問題が新しい日韓関係を築けるかどうかの試金石になるとの見方を示す。
 木宮氏は、歴史上の経緯がどうであろうと、現在の竹島は韓国が実効支配している上、韓国では教科書で徹底して竹島が韓国の固有の領土であることを教え込んでいるため、韓国人の中に、竹島が韓国の一部であることを疑う人はほとんどいないと指摘する。反対に日本がこれまでそのような主張を韓国に対して明確にしてこなかったため、今回の教育指導要領への記載は一般の韓国人にとって、日本が突然、韓国の領土の一部が自分たちのものであるかのような暴論を持ち出したように映っているのではないかと言う。
 木宮氏はまた、先の大統領選挙や議会選挙の結果は、盧武鉉前政権に対する幻滅の意思表示の意味合いが強く、李明博政権は選挙結果が示すほどの国民の幅広い支持を得ているとは言い切れないとの見方を示す。対韓関係の改善を目指す福田政権にとっては、苦境に陥った李政権に助け船を出すことで、日韓関係を大きく前進させられる可能性があった。そこに竹島問題が再燃したことで、福田政権は大きなチャンスを逃したかもしれないと木宮氏は残念がる。
 牛肉問題や竹島問題などで激しく揺れる李明博政権は、どこに向かっているのか。10年ぶりの保守政権の現状と今後の方向性、そして日本にとって10年ぶりの保守政権とのつきあい方などを、木宮氏と議論した。
 ニュース・コーナーでは、大分県の教員採用試験汚職と、総務省によるBSデジタル放送のテレビショッピング総量規制問題をとりあげた。

木宮 正史きみや ただし
(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
1960年静岡県生まれ。83年東京大学法学部卒業。92年韓国高麗大学大学院修了。政治学博士。93年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。同年法政大学法学部助教授。96年より現職。2002~03年ハーバード大学イエンチン研究所客員研究員。著書に『韓国』、共著に『戦後日韓関係の展開』など。 381_kimiya
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