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2018年07月07日公開

世界がこれだけサッカーに熱狂するわけ

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第900回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

日本福祉大学スポーツ科学部教授

1956年大阪府生まれ。79年京都教育大学教育学部卒業。82年筑波大学大学院体育研究科修士課程修了。高校教員、名古屋短大教授などを経て2009年より現職。2015年より日本福祉大学スポーツ科学センター長を兼務。著書に『フットボールの原点ーサッカー、ラグビーの面白さの根源を探る』など。

概要

 サッカーのW杯ロシア大会の決勝トーナメント1回戦の日本対ベルギーの試合は、試合開始が日本時間で午前3時という悪条件にもかかわらず、テレビ中継の瞬間最高視聴率が42.6%を記録したという。

 実際、ワールドカップの人気は凄まじい。今大会はまだベスト4が出揃っていない段階だが、既に前回大会を上回る関心が集まっているそうだ。前回のブラジル大会では、全試合のテレビの延べ視聴者数が世界207カ国で260億人に達した。これは平均すると毎試合10億人以上が視聴している計算になる。

 それにしてもなぜ、世界中のこれだけ多くの人々が、サッカーにこうまで熱狂できるのだろうか。

 サッカーの起源と言われる「民族フットボール」に詳しい日本福祉大学スポーツ科学部の吉田文久教授は、サッカーは極端に点が入りにくいルールにしたことが、世界的に人気を博している理由であると同時に、サッカーを退屈だと感じる人が多い原因にもなっていると指摘する。

 確かにサッカーほど点が入らないスポーツは、他に例を見ないかもしれない。得点シーンを期待している人にとっては、90分テレビにかじりついていても、せいぜい2~3回しか得点シーンを見ることができないのがサッカーだ。無論、だからこそ、点が入った時の喜びは大きいし、点を取られた時の絶望も大きくなる。

 吉田氏によると、サッカーが点が入りにくいスポーツになっていることには、歴史的な経緯も関係しているという。イギリスには今日のサッカーの原型と言われ、街全体を舞台に街中が参加して行われる「民族フットボール」が、今も多くの地域に残っているが、その多くは、どちらかが点を取った段階で勝者が決まるサドンデス方式なのだそうだ。

 また、民族フットボールが1863年のFA(フットボール協会)設立とともに競技に変遷していく過程でも、途中で枝分かれしたラグビーやアメリカン・フットボールが、ボールを手で抱えて前に進むことを認めたのに対し、アソシエーション・フットボール(サッカー)だけは、一切手を使えないルールを採用するなど、難易度を高くすることで、結果的に点が入り難いスポーツになっていった。サッカーの前身となったフットボールでは、ボールを持って走ることは認められていなかったが、手でボールをキャッチすることは許されていた。

 アイルランドに今も残るサッカーの原型の一つ「ゲーリック・フットボール」はラグビーのようにボールを持って前進することが許されているが、フィールドもラグビーと同じようなゴールポストのクロスバーの下の部分にサッカーゴールのネットが張られていて、ゴールキーパーもいる。ボールがネットの部分に蹴り込まれれば3点、バーの上を超えれば1点が与えられるという、今日のサッカーとラグビーを足して2で割ったようなスポーツだが、当然この方が得点機会はサッカーよりも多くなる。

 実はサッカーに後から加えられたオフサイド・ルールだけは、点がより入りやすくするための措置だったというのが意外だ。オフサイドは攻撃側にとって大きな制約になっているように見えるが、実は伝統的なフットボールではボールを持った選手の前にいる選手は全員がオフサイド扱いだったそうだ。つまりボールを持った選手は、自分より前にいる選手にパスをすることができないため、ボールを前に進めるためには自分自身がドリブルで前進するしかなかった。

 今もラグビーはボールホルダーよりも前にいる選手は全員オフサイドでプレーができないが、一切手を使えず、ゴールは狭く、しかもゴール前には自由に手が使えるゴールキーパーがいるサッカーは、多少オフサイドのルールが緩和されても、最も点が入り難いスポーツであることに変わりはない。

 また、一切手を使えなくしたことで、ラグビーのように身体的に大きな民族が必ずしも優位にならない点も、サッカーが多くの国で盛んになった理由に数えられるかもしれない。ルールが単純で誰にもわかりやすく、ボール一つあれば誰もがプレーでき、体が小さくでも大選手になる夢を持つことができる。

 そう考えてみると、民族フットボールから枝分かれした数々のフットボールの中でも、サッカーはもっとも多くの人に受け入れられるルールを採用したと言っていいのかもしれない。

 これから佳境に入るW杯を横目に、民族フットボールから生まれたサッカーがいかにして現在のような世界で最も人気のあるスポーツに成長していったのかなどについて、数ある民族フットボールの中でも最も伝統的なシュローブタイド・フットボールを現地で取材してきた吉田氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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