PCR検査とワクチン「世田谷モデル」から見えてきた日本の目詰まりの正体
世田谷区長
世の中はまだホリデイ気分が抜けきれないが、どうやら政治状況はそんな暢気なことを言っている場合ではなくなっているようだ。ゴールデンウィーク明けに終盤戦の山場を迎える国会で、我々の多くが気づかない間にとても重大な法案が与党の賛成多数で次々に可決されようとしている。
中でも深刻なのが、入国管理法の改正案だ。これは日本を訪れる750万人の外国人に対して、入国審査時に指紋による認証を義務付ける新しいコンピューターシステムの導入をうたったもので、法案は既に衆議院を通過し、ゴールデンウィーク明けから参議院での審議が始まる。共謀罪や教育基本法の改正とは異なりメディアもほとんど問題として取り上げていないため、これは既に成立を前提とした審議が行われているという点でも、より注意が必要だ。
この法案については、そもそも外国人に洩れなく指紋認証を要求することの是非についても、考えなければならない点は多い。犯罪者でもないただの旅行者にまで例外なく指紋を登録させることの人権上の問題ももちろんある。しかも、数年前にアメリカが同様のシステムを導入した際に、ブラジルがアメリカ人のみに対して入国時に指紋押捺を求める報復的な措置を取ったことからもわかるように、日本が外国人に対してこれを行えば、外国で日本人(とアメリカ人)のみが、同様に指紋押捺を求められるようになる可能性もある。そのような可能性まで考慮に入れた上で、この法案は審議されているのだろうか。
更にこの法案が注意を要すると思われる点は、外国人同様日本人も希望すれば指紋を登録することができるとしている点だ。指紋を登録することで、高速道路のETCのように、入国審査を自動化することができるという。入国審査場で並ばずに済むという理由で、自ら進んで指紋を登録する人も少なくないだろうが、問題はそこで登録された指紋情報が、どのように管理されるかが法案では明記されていないのだ。
もともとこのシステムは外国人のテロリストや犯罪者の入国を水際で防ぐことを目的としている。そのため、登録された情報は法務省、警察、財務省(税関を管轄する官庁として)のデータベースと広く共有されることが、このシステムのウリにもなっている。つまり、日本人でも指紋と個人情報を登録すれば、その情報はデータベース化され広く共有されることになるはずだが、その歯止め策については、もともと日本人の登録を前提としていないため、何も明記されていないのが実情なのだ。
しかも、更に気になることがある。このシステム全てを請け負っているのが、アクセンチュアというバミューダに本社を置く米国系のコンサルティング会社という点だ。アメリカは同時テロを受けて2004年から1兆円をかけて新たにUS-VISITという入国時の指紋認証システムを導入しているが、それを1兆円で請け負ったのがこのアクセンチュアだった。対米追従が指摘されて久しいが、日本はどうやら入国管理システムまでアメリカのシステムの一部になろうとしているかにも見える。
今週の丸激では、衆院の法務委員会で法案の問題点を積極的に追求している社民党の保坂議員とともに、入国管理法改正案や共謀罪の問題点と、それが報道されないまま通過していく異常事態などについて考えた。