2015年04月18日公開

辺野古問題は住民投票にかけなければならない

憲法学者の木村草太氏が国会の責任を強調

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ゲスト

1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業。同大学法学政治学研究科助手、首都大学東京都市教養学部准教授を経て16年より現職。著書に『憲法の急所─権利論を組み立てる』、『自衛隊と憲法─これからの改憲論議のために』など。

著書

概要

 4月8日の参議院予算委員会で日本を元気にする会代表兼幹事長の松田公太参院議員が、安倍首相に対し、「辺野古の問題は国政の重要事項」かの確認を繰り返し迫るシーンが見られた。そのやりとりの真意を掴みかねて、不思議に思われた方も多かったかもしれない。
 ニュースではそのやりとりの中で安倍首相が、菅官房長官が封印した「粛々と」という表現を使ったために、その部分ばかりがクローズアップされてしまったが、実はこのやりとりには、現在政府と沖縄県の意見の相違から閉塞状態に陥っている辺野古問題を解決に導くかもしれない重要なカギが潜んでいた。
 この一連のやりとりの中で、安倍首相が、辺野古の問題は「国政の重要事項」であることを認めたことを受けて、松田議員は、もし辺野古の問題が国政の重要事項なのであれば、国権の最高機関である国会の立法が必要になってえしかるべきではないか、と切り出したのだ。そして、国会が審議することになった場合、辺野古に新たに米軍基地を建設することは、名護市に大きな負担を強いることになる立法を策定する以上、憲法95条によって、名護市の住民投票が必要になるのではないかと首相に問うたのだった。
 安倍首相は質問の真意を理解したかどうか定かではなかったが、「国民の命と幸せな暮らし、領土、領海を守っていく」ことも、「日米同盟の中において、条約上の義務を果たしていく」ことも、いずれも行政の責任であると回答し、新たな法律は不要であり、「すでにある法令にのっとって粛々と進めて」いく意向を表明した。ここで使った「粛々」の部分だけが、大きなニュースになったのだった。
 また、住民投票について安倍首相は、「多様な住民ニーズをより適切に地方公共団体の行政運営に反映させるために、住民の意思を把握する手法として代表民主制を補完するもの」と位置づけ、辺野古への基地の移転については住民投票の目的には沿わないとの考えを示した。
 憲法学者で首都大学東京准教授の木村草太氏はこの件で松田議員にアドバイスをしていたことを認めた上で、「政府の辺野古での基地建設は憲法上必要な手続きを踏んでいないので憲法違反と言える」と指摘する。
 辺野古での米軍基地の建設が政府にとって国政の重要事項であるならば、憲法41条によって国権の最高機関であることは明確に定められている国会の審議が必要であり、これを経ず政府が独断でこれを決定することは、憲法違反に問われると木村氏は言うのだ。
 憲法41条は「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」ことを定めている。
 米軍への基地提供は駐留軍用地特措法によって政府が土地を収用して造ることが認められていると解されている。しかし、「どの法律にも辺野古に作るとは書かれていない。どうしても基地を辺野古に作らなければならない法的根拠が見当たらないのだ。
 そもそも駐留軍用地特措法には地元の承認を得る手続きが定められておらず、政府が独断でどこに米軍基地を作ってもいいような形になっているが、これを辺野古に当てはめた場合、地方公共団体に適用される特別法には住民投票で過半数の同意を得なければならないことを定めた憲法95条に抵触する可能性がある。
 どうしても辺野古に基地を作りたいのであれば、まずは憲法41条に則り、国会による立法、すなわち「辺野古特措法」が必要であり、それを制定するためには、憲法95条が定める住民投票による過半数の賛成が必要になる、という。これは木村氏の憲法学者としての意見というよりも、憲法価値から導かれる帰結だと木村氏は言う。
 木村氏によると、松田公太議員は辺野古特措法を議員立法で提出する計画を進めているとのことで、今後辺野古問題が、憲法論争に発展する現実的な可能性が出てきている。
 米軍基地をめぐり、その立地対象となった自治体と政府の意見が真っ向からぶつかり合う形となった場合、憲法はその問題をどのように解決に導いてくれるのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が憲法学者の木村草太氏に聞いた。

 

憲法第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
 

 
憲法第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

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