2012年4月14日
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市長の熱意を裁けるのか

 1999年の東京都国立市の高層マンションの建設計画をめぐり、当時市長だった上原公子氏がその建設を阻止しようとした行為が建設会社に損害を与えたとして、元市長個人が損害賠償請求を受ける事態に発展している。
 これは建設会社の明和地所が、国立市内に18階建(後に14階建に変更)マンションの建設を計画したところ、当時の上原市長が、市景観条例の改正や都に対しガスや電気の供給が行われないよう要請するなどして徹底抗戦の構えを見せたため、マンションは完成後13ヶ月経っても200戸以上が売れ残ってしまったというもの。
 明和地所は 市長の行為が営業妨害と信用毀損にあたるとして、市を提訴。東京高裁は2005年、市長の行為を不法行為と認定し、市は明和地所に損害賠償約3124万円を支払った。
 しかし、話はここでは終わらない。この判決を受けて、市の住民の有志が、上原元市長の行為によって市が損害を受けたとして、市に対し、市が支払ったのと同額を元市長に請求するよう求める住民訴訟を起こし、市が敗訴してしまう。この判決により、市は元市長個人を訴えざるを得なくなり、現在、この裁判が東京地裁で係争中だ。
 裁判所が認定したように、建設計画が明らかになってからそれを制限する条例を制定し、それを遡及的に適用しようとするなど、マンションの建設を阻止するために元市長がとった行動には、首長としてはやや行き過ぎの面はあったかもしれない。
 とはいえ元市長の一連の行為は、景観保護を目指す地方自治体の長としての価値判断に根ざしたものに他ならない。さらに、これは上原氏個人ではなく、 あくまで市長という立場でとった行動だった。首長は政治家である以上、一定の価値観を持ち、その価値を訴えることで有権者から選ばれている。首長がその価値観に基づいて行動をとるのは当然ともいえる。
 しかし、過去3回の裁判で、司法は上原氏の行為を「首長に要請される中立性・公平性を逸脱し、急激かつ強引な行政施策の変更であり、また、異例かつ執拗な目的達成行為であって、地方公共団体又はその首長として社会通念上許容される限度を逸脱している」として、首長に中立性を求めた上で、元市長の行為の行き過ぎを認定している。
 首長が自身の価値観に基づいて政策の実現を図ろうとするとき、その熱意はどこまで裁きの対象になるのか。また、公職の座にあった者の在職中の行為に対して、退任後その個人に賠償を請求することは妥当なのか。
 政治の機能の根幹を問うこの裁判について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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