2021年05月01日公開

5金スペシャル

コロナでいよいよ露わになったコモンを破壊する資本主義の正体

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1047回)

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ゲスト

大阪市立大学大学院経済学研究科准教授

1987年東京都生まれ。2009年米ウェズリアン大学政治学部卒業。12年独ベルリン自由大学哲学科修士課程修了。15年独フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー客員研究員、カリフォルニア大学サンタバーバラ校客員研究員などを経て、17年より現職。専門は経済思想・社会思想。著書に『人新世の「資本論」』など。

著書

概要

 月の5回目の金曜日に特別企画をお送りする5金スペシャル

 今年2回目の5金となる今回は、25万部の大ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』の著者で新進気鋭の経済・社会思想学者として今論壇の話題をさらっている大阪市立大学准教授の斎藤幸平氏をゲストに招き、資本主義の限界や成長が豊かさをもたらすという神話への疑問点などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司との特別対談を無料でお送りする。

 斎藤氏はマルクスが「資本論」の中で著した、人間が資本に振り回されるようになり主体と客体が逆転するという話は、まだまだ大きな経済成長が期待できる20世紀の資本主義の黄金期には流行らなかったが、21世紀に入り資本主義の限界が至るところで露呈し、地球環境問題も深刻化の一途を辿ることに加え、新型コロナウイルスによって資本主義の矛盾や限界がより顕著になったことで、世界中でこれまでの社会や経済のあり方について「これで本当にいいのか」と考える人が増えたと指摘。その結果、人新世(人間が地球の地質学的特徴まで変えてしまった時代)のあり方が根本から問われるようになったと言う。

 これまで人類は、いや少なくとも先進国では、あたかも無限の成長が可能であるかのように振る舞い、成長こそが豊かさを、豊かさこそが幸せを約束するものと信じて疑わずにやってきた。しかし、その実は成長のコストを外部化することで、その代償を一部の人に押しつけ、その恩恵を一握りの豊かな国だけが独占してきたに過ぎなかった。外部化するコストの矛先はかつては発展途上国の人々であり、また地球環境だった。そしてわれわれの底知れぬ欲望がグローバル化なるスキームまで生み出したことで、しわ寄せの押し付け先をいよいよ国内の弱者にまで求めるようになっていった。

 また、飽くなき成長を追求した結果、その先に真の豊さと幸せが待っていたかと言えば、それもまた必ずしもそうとはいい切れないのが現実だった。

 斎藤氏はバブル以降しか知らない世代は、そもそも成長によって豊かになろうという感覚がなく、グレタ・トゥーンベリさんに代表されるさらに若い「Z世代」になると、気候変動に対する恐怖すら覚えるようになってきている。そうした世代にとっては、上の世代が訴える「格差の是正」だの「SDGs」だといったスローガンは、結局のところ現在の経済・社会構造を根本から壊さないための弥縫策にしか見えず、彼らの感覚では「何言ってんの?」という疑問があるのだと言う。その世代にとっては、小手先の微調整などはもはや手遅れであり、コモン(社会的共通資本)をベースにそもそも成長を前提としない新しい社会・経済システムを根本から作り直さない限り、今世界が直面する問題は解決しないと感じる人が増えているのだという。

 『人新世の「資本論」』が思想書としては異例中の異例とも言うべき大ヒットとなった背景には、そうした世代の人々の「よく言ってくれた」との思いがあったという手応えを感じていると斎藤氏は言う。

 最後に斎藤氏は、『人新世の「資本論」』には今後日本で自分たちが作っていくべき社会像を描くところまでは踏み込んでいないことを指摘した上で、今後本書で紹介された「コモン」という考え方やその価値が広く理解されることで、多くの人が地域コミュニティで何らかの動きを始めるきっかけになることに期待していると語る。

 われわれが人として子々孫々のために今すべきことは何なのか、そのためにどこから手を付けたらいいのかなどについて、「人新世」という地質学的な長いスパンで現在の社会のあり方に対する問題提起を行っている斎藤氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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