2014年03月29日公開

最高裁は捜査官のリークを肯定するのか 弘中惇一郎氏(弁護士・村木厚子氏リーク裁判代理人)

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ゲスト

1945年山口県生まれ。68年東京大学法学部卒業。70年弁護士登録。郵便不正事件の村木厚子氏の他、ロス疑惑事件の三浦和義氏、薬害エイズの安部英氏、守屋武昌元防衛次官、小沢一郎民主党元代表、堀江貴文元ライブドア社長、鈴木宗男元衆議院議員らの主任弁護人・代理人を務める。自由人権協会元代表理事。共著に『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』、『刑事裁判と知る権利』など。

著書

司会

概要

 郵便不正事件で無罪となった元厚労省局長の村木厚子さんが、検察による報道機関へのリークによって社会的名誉を傷つけられたとして起こしていた国家賠償訴訟で、最高裁は3月25日、村木さん側の上告を棄却する決定を下し、村木さんの敗訴が確定した。
 この裁判は、郵便不正事件で逮捕・起訴され、後に捜査官による証拠の改ざんが行われていたことが明らかになり無罪判決を受けた村木さんが起こしていたもので、既に別の裁判で不当な逮捕・起訴に対する国家賠償が認定されていた村木さんが、唯一裁判所が認定していなかった検察のリークによる名誉の毀損に対して、損害賠償を求めたもの。
 最高裁第三小法廷は上告を棄却する旨だけを記したわずか3行の決定文を発表することで、高裁判決を支持した。
 村木さん側は供述調書の内容と酷似した報道が行われていたことから、検察官がマスメディアに情報をリークしたことは明らかであると主張したが、東京高裁の原優裁判長は2013年4月10日の判決で、「情報漏洩をしたと目される大阪地検の職員が特定されておらず、当該職員が情報を漏洩した時期、態様、及び目的等について具体的な事実を認定するに足りる的確な証拠がない」と、リークをした検事の名前や場所、目的などが特定されていないことを理由に、リークの存在を認定しなかった。
 報道機関による捜査情報のリークは、身柄が拘束されて反論ができない被告を追い込む要素や、本来であれば被疑者に味方するはずの証人の証言にマイナスの影響を及ぼすなど、公正な刑事裁判を妨げる恐れがある。また、そもそも誰が言ったかも明らかにならないリークでは、事実と異なる情報がリークされ報じられても、誰にも責任が及ばないため、虚偽の情報や誇張された情報が報じられることが多い。リークの垂れ流しが冤罪を生みやすい土壌を作っている面があることも否定できない。
 今回の決定では、最高裁の判決がリークの正当性を認めたのではなく、村木さんの主張ではリークがあったことが証明されていないとする高裁判決を支持したものに過ぎないということは踏まえておく必要があるだろう。しかし、最高裁が支持した高裁判決は、リークの存在を証明するためには、事実上リークをした捜査官の名前が特定されていることを条件としていることから、事実上、リークを容認したとも受け止められる内容で、問題が多い。
 村木さんの代理人を務める弘中淳一郎弁護士は、「誰がリークしたかが特定されなければリークの損害賠償を問えないとなると、今後(リークよって名誉が傷つけられたことへの)責任追及が難しくなる。裁判所がこの問題に対する理解が極めて不十分だったと言わざるを得ない」と語り、この判決が結果的に リークを放置することにつながることへの懸念を表明した。
 証拠の改ざんまで露呈し、特捜部幹部2人と主任検事の逮捕にまで至った郵便不正事件では、無罪となった元厚労省局長の村木厚子さんに対する不当な逮捕、勾留、起訴などの損害賠償として、国は村木さんへ約3770万円を支払っている。しかし、不当な行為の中身として村木さん側が示した捜査情報のリーク報道については国側が責任を認めなかったために、村木さんが国に330万円の損害賠償を求める裁判を起こして争っていた。
 なぜリークが問題なのか。最高裁判決は今後の刑事事件報道にどのような影響を及ぼすのかなどを、弘中惇一郎弁護士にジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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