2013年9月21日
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特定秘密保護法案
自身に刃が向けられていることに
気づかない政治の貧困を嘆く

 恣意性や外部チェック機能の不在から暴走や濫用の懸念が指摘される特定秘密法案だが、一つ不思議でならないのが、このような法律を成立させるために奔走している政治家が大勢いるということだ。なぜならば、政府情報の秘密化、すなわち公開義務からの解放に対する政府の裁量権が拡大することは、実は政治と官僚との力関係においても、決して政治の側に有利に働くことではないからだ。
 特定秘密保護法とは防衛、外交、防諜、テロ活動防止に関する事項などで特定秘密に指定された情報を、公務員が漏らしたり、漏らすよう働きかけた場合(教唆)に、最大で懲役10年の処罰の対象となる法律で、現在、政府が秋の臨時国会での成立を目指しているというもの。
 外交や防衛に関する業務を政府に委ねている以上は、一定の秘密事項が存在することは避けられないかもしれない。しかし、政府に特定の情報を秘密にする権限を与える場合、秘密にできる情報の基準と、その妥当性が一定の期間の後に検証できる事後チェック機能をビルトインしなければ、そのような権限が濫用され暴走することは、目に見えている。特に中立的な第三者による事後チェック機能がビルトインされていなければ、時の権力者は自分たちに都合の悪い情報はすべて秘密に指定してしまえば、誰もその秘密の妥当性を検証できないし、その秘密のベールを剥がすこともできなくなってしまうのだ。
 特定秘密の指定は一応は各省庁の長、すなわち大臣が行うことになっている。そのため、政治家は自分は秘密を知り得る側に立っていて、それを外敵や国民から隠す立場にあると考えているように見える。しかし、例えばある政策をめぐり官僚機構を中心とする統治権力と政治家が対立した時、その政策に関連した重要な情報が秘密に指定されてしまえば、政治家は官僚に対する最大の武器であるはずの「世論」を味方に付けることができなくなってしまう。政治家は自分の主張が正しいかどうかを国民に問うことができず、いわば丸腰で官僚機構と対峙しなければならなくなってしまうのだ。
 また、恣意的な秘密指定権限の拡大は、野党が機能する上でも破壊的な効果をもたらす。現在たまたま与党の座にあり、権力を手にしている政治勢力にとっては、秘密権限の拡大はおいしい蜜の味がするように見えるかもしれないが、実際のところ自分たちがいつまでも政治権力を握り続けられるかどうかの保障はない。
 どうしても秘密として護らなければならないものがあると言うのであれば、恣意的な運用を防ぐための秘密指定基準の明確化と、それが遵守されているかどうかを一定の期間の後に事後チェックする機能を十分過ぎるほど盛り込まない限り、悪用、濫用は必至である。
 15年前の盗聴法制定時とまったく同じ議論を繰り返すことになる特定秘密保護法案の問題点を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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