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2020年05月16日公開

コロナで露わになる日本の貧弱なセーフティネットの実情

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第997回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長
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1987年東京都生まれ。2006年麻布高等学校卒業。10年より自立生活サポートセンター・もやいの活動に参加。14年より現職。新宿ごはんプラス共同代表を兼務。著書に『すぐそばにある「貧困」』、『絶望しないための貧困学』。

著書

概要

 新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐための緊急事態宣言が2ヶ月目に入り、一部の地域では宣言解除の動きが見られるものの、東京、大阪などの都市部では依然として事業者への自粛要請が継続する中、いよいよ経済的な影響が多くの人々の日常生活にも影を落とし始めている。4月の緊急事態宣言時に1ヶ月間は何とか踏ん張ろうと耐えてきた中小事業者や飲食店、店舗の多くが、宣言の延長によって力尽きて廃業に追い込まれているほか、企業の倒産や失業も急増しているが、そうした中にあって特に社会の最弱者ともいうべき生活困窮者の窮状が待ったなしの状態を迎えている。

 政府は一人あたり10万円の特別定額給付金を筆頭に数々の支援メニューだけは用意しているが、いずれもまだ実施には至っていない。各国で直接、間接的な支援が迅速に行われ、コロナへの対応がもっとも遅れていたアメリカでさえ、大人一人当たり1,200ドル(約13万円)、子供には500ドル(5万5,000円)の緊急支援金の小切手が全国一斉に送付され始めているが、日本はまだ布マスク2枚さえ届けきれていない状況だ。

 また、公明党から実施を迫られるなどすったもんだの末辛うじて絞り出した10万円の一律給付金も、ホームレスなど住民票を持たない人は受け取ることができないなど、「最も支援を必要としている人に支援が届かない状況」が常態化していると、生活困窮者を支援するNPO「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長は言う。これは今回の支援策に限ったことではないが、大西氏によると政府のコロナ支援策はいずれも、住民登録がないと受けられない建て付けになっているのだそうだ。

 また仮に何ヶ月か待たされた末にようやく10万円の支援を受け取ることができたとしても、それは1回ぽっきりのもので、その後の継続的な支援が用意されているわけではない。コロナ禍が多くの人にもたらしている経済的な影響の大きさを考えれば、焼け石に水の感は拭えない。

 大西氏が主宰するNPOにも、生活困窮者からの相談が激増しているという。特に、住む家を持たない人たちの窮状は深刻で、何らかの公的な給付や助成を受けられるごく一握りの人以外は、生活保護を申請するしかないケースがほとんどだそうだ。

 しかし、コロナの影響がこれだけ大きくなっていても、まだ生活保護に対するスティグマや抵抗は根強く、自治体から親族に連絡することが条件となっていることなどもあり、受ける側もできれば生活保護だけは避けたいという人が依然として多いし、自治体の側も相変わらず窓口であれこれ条件を付けて追い返そうとする事例が後を絶たないと、大西氏は言う。

 しかも、人と人の密な関係を否定するコロナの状況は、大西氏のような支援者が困窮者に付き添って自治体窓口に出向くことや、一対一で時間をかけて生活困窮者の相談に乗ることを困難にしているため、支援のハードルがより高くなってしまっている。外出の自粛が要請されている状況下ではボランティアを大々的に募集することもできないし、感染を恐れて炊き出しなども難しくなっている。もっとも、事態があまりにも深刻化し、もはやそんなことを言っている場合ではなくなっているので、大西氏の団体はこの状況下でも炊き出しを実施しているそうだが。

 無論、コロナの影響を受けているのは生活困窮者だけではない。しかし、いざ政府が何らかの支援策を講じた時、その支援によって救われる人はまだ社会のセーフティネットから完全に外れていない人なのだと大西氏は言う。例えば住民票がない人はコロナ以前から生活保護を受けることもできなかったし、今回の一律の給付金を受けることもできない。

 そして日本は2000年代に入ってから新自由主義的な政治思想に基づき、社会のセーフティネットを急ピッチで削ってきた。そこにコロナが襲いかかった。大西氏は生活困窮者が置かれている現在の状況は、11年前のリーマンショックの時よりも遙かに悪いと言う。それはコロナの影響が全国的に全ての人の上に降りかかっていることもさることながら、その間、社会のセーフティネットがそれだけ傷んだ結果でもある。

 ピューリサーチの国際世論調査によって、日本という国が困窮者に対して群を抜いて世界で最も冷たい国であることが明らかになってから13年が経った。今回のコロナの影響で、これまで困窮者支援を他人事のように見過ごしていた人の中にも、初めて自分自身が困窮者の側に立たされることになった人も多い。日々、現場で支援に奔走する大西氏は、今回のコロナ禍を機に、日本の困窮者に冷たい状況を、何とか少しでもプラスの方向に変えていきたいと抱負を語る。

 コロナの経済的影響、とりわけ生活困窮者への影響と支援の現状について、大西氏にジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

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