2007年10月4日
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誰がミャンマー軍事政権を支えているのか

津守滋氏(元ミャンマー特命全権大使)
マル激トーク・オン・ディマンド 第340回

 ミャンマーの非暴力・反政府デモは全国に飛び火したが、軍事政権は武器を持たないデモ隊にも容赦なく発砲を行い、これを力で押さえ込みつつある。9月27日には、日本人ジャーナリストの長井健司さんが射殺されている。
 国際社会は人道を無視した軍事政権の力の対応を軒並み非難しているが、国連安保理では、ミャンマー国内に権益を持ち自国の人権侵害が批判されている中国とロシアの反対で、非難決議すら行えなかった。また、最大の貿易相手国にして隣国のタイも、エネルギー源をミャンマーの天然ガスに依存していることもあり、軍事政権批判には慎重な姿勢を崩していない。
 2002年まで日本政府のミャンマー特命全権大使を務めた津守滋氏は、今回のデモを市民生活が困窮する中で「起きるべくして、起きた」ものとした上で、権力保持や治安維持のためには自国民に銃口を向けることも辞さない軍事政権を批判する。
 しかし、これだけの人権侵害を行っている軍事政権を、日本を含む諸外国が、経済援助や貿易によって、側面から支援している現実も直視しなければならないだろう。中国にとってミャンマーはインド洋にアクセスするための戦略上の要衝であり、天然ガスなどの豊富な天然資源にはタイや日本、韓国などが食指を伸ばしている。人権侵害を厳しく批判しているアメリカやフランスの企業でさえ、ミャンマーの天然ガスパイプラインプロジェクトに参加しているのが実情なのだ。金額こそ減ってきているが、日本がミャンマーへのODAの最大の供与国であることも忘れてはならないだろう。
 どうも、外交面での表面的な非難声明とは裏腹に、諸外国は天然資源が豊富で地政学的にも重要な場所に位置するミャンマーと、いろいろな形で経済的に結びつき、直接的、間接的にミャンマーの軍事政権を支えているという側面があることは否定できそうにない。
 特に日本はミャンマーとは特別な歴史的結びつきを持つ。ミャンマー建国の父にして、民主化リーダーのアウンサンスーチー氏の父親のアウンサン将軍も、実は戦前の帝国陸軍が軍事訓練を通じて育てたビルマ建国30人の志士の一人だった。そのためアウンサンスーチー氏も独学で日本語を学び、一時京都大学に留学している。また、津守氏によると、ミャンマー国内には、日本がイギリスの植民からミャンマーを開放してくれたとの認識が広く共有されているため、親日感情も強く、日本政府は1988年の軍事政権成立までは多額のODAをミャンマーに供与してきている。
 中東やアフリカ、北朝鮮など他の圧政国家と比べて、日本がミャンマーに対してはるかに強い影響力を行使できる立場にあることも事実なのだ。
 自国民が治安警察に射殺され、軍事政権の強権発動を表面では非難している日本は、果たしてその影響力を人権弾圧や圧政を終わらせるために有効に使っているだろうか。民主化への展望が開けないミャンマー情勢について、対ミャンマー関係の裏も表も知り尽くした津守氏と、歴史的な経緯を振り返りつつ、日本の役割を考えた。

津守 滋つもり しげる
(元ミャンマー特命全権大使)
1939年大阪府生まれ。62年京都大学法学部卒業。62年法務省入省。65年外務省入省。後藤田正晴官房長官秘書官、アジア局政策課長、欧亜局審議官、駐ベルリン総領事、大阪大学大学院国際公共政策科教授などを経て、00年より02年までミャンマー特命全権大使として赴任。03年に東洋英和女学院大学国際社会学部教授に就任。著書に『バルカンを行く』、『後藤田正晴の遺訓』など。

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