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2018年02月10日公開

民主国家はシャープパワーに太刀打ちできるのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第879回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
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1983年京都府生まれ。2006年慶應義塾大学総合政策学部卒業。12年同大学同研究科博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教、立命館大学大学院特別招聘准教授などを経て、16年4月より現職。著書に『メディアと自民党』、『なぜ政治はわかりにくいのか』など。

著書

概要

 今日のテーマは今、国際論壇で話題となっている「シャープパワー」。

 「シャープパワー」とはアメリカの政府系シンクタンクが昨年末にまとめた報告書で初めて使われた言葉で、民主国家を弱体化させるために、民主国家が重視する言論の自由や経済活動の自由を逆手に取るかたちで様々な工作を行う専制国家を意味している。当初は中国台頭のアメリカに対する脅威を表現するために使われた概念だったが、ロシアが2016年の大統領選挙に様々な形で介入していた事実が明らかになるにつれ、中国に加えてロシアもその対象と考えられるようになった。また、中国やロシアを手本に、そのような手法を真似て民主主義を操ろうとする国が南米や東欧にまで拡がり始めているという。

 元々、国の軍事力を裏付けに影響力を行使する伝統的な「ハードパワー」に対し、20世紀末頃からハーバード大学のジョセフ・ナイらが唱えた、崇高な価値観や倫理観を通じて影響力を行使する「ソフトパワー」が重視されてきた。しかし、その崇高な価値基準を逆手に取ることで民主国家を分断したり弱体化させる専制国家の「シャープパワー」が今、台頭してきている。「ソフトパワー」の脆弱で柔らかい部分に、鋭い(シャープ)な刃先を突き刺すという意味が込められているという。

 国が外交上の目的を達するために他国に対して様々な工作を行うことは、何も新しいことではないが、「シャープパワー」の特徴は、民主国家が本来の強みとしてきた民主主義の自由や開放性、経済活動の自由度などを逆手に取って様々な工作を行っている点だ。特にその中でも、ソーシャルメディア(SNS)を使った世論操作や社会分断、選挙への介入は、先のアメリカ大統領選挙や昨年のドイツの総選挙で大きな成果を上げた可能性があり、民主国家にとってはその根幹を揺るがしかねない重大な脅威となっている。

 先のアメリカ大統領選挙ではロシア政府系企業IRA(Internet Research Agency)がFacebookを使い、470個以上のフェイクアカウントを通して80,000件以上のフェイク情報を投稿し、1億2,600万人のアメリカ人がその投稿を閲覧していたことが、アメリカ議会の調査で明らかになっている。それらのフェイクアカウントはいずれももっともらしい政治団体や政治運動のような名前を冠したもので、投稿内容はほぼすべてヒラリー・クリントンを中傷する性格のものだった。他にもIRAは大統領選挙中、ツイッターでも2,700以上のフェイクアカウントを使って13万件以上のフェイクニュースを投稿していた。

 これらのネット工作が大統領選挙の結果にどの程度の影響を与えたかは定かではないが、こうした工作の実態はロシアや中国が行っているソフトパワー工作の氷山の一角に過ぎないと考えられている。また、シャープパワーは対象国の社会的分断や世論操作のために、企業への投資や教育機関への寄付、インフルエンサー(オピニオンリーダー)の取り込みやメディアへの広告出稿なども駆使しているという。いずれも民主国家の多くでは自由が保障されている活動だ。

 フェイクニュースの蔓延やネットを使った中傷や炎上マーケティングは以前から問題になっていたが、言わばネット社会化した民主国家の弱点を突く形で国家目的を達成したり、潜在的な敵国を弱体化させる外国勢力の活動の存在が明らかになった今、SNSのあり方があらためて問われることは避けられない。

 ネットと民主主義の関わりに詳しい東京工業大学の西田亮介准教授は、それでも民主主義の利点である言論の自由を制限するような法的な規制を設けるべきではないとの立場を取るが、かといって現在のように、世論が外国勢力に乗っ取られかねない状態を放置するのではなく、「共同規制」と呼ばれる業界団体による自主規制導入の必要性を強調する。

 民主主義はシャープパワーの脅威に太刀打ちできるのか。民主国家が民主主義の最大の果実である表現の自由や経済活動の自由を失わずに、専制国家に太刀打ちすることができるのか。社会がネット依存の度合いを強める中での必然な帰結とも言えるシャープパワーの台頭から、民主主義のあるべき姿を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、西田氏と議論した。

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