フランス大統領選が露呈したグローバル化の現実

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第320回)

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公開日 2007年05月18日

ゲスト

津田塾大学学芸学部国際関係学科教授

1970年愛知県生まれ。94年早稲田大学文学部卒業。2003年パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。津田塾大学准教授などを経て、13年より現職。哲学博士。著書に『成長なき時代のナショナリズム』、『哲学はなぜ役に立つのか?』など。

著書

概要

5月16日、ニコラ・サルコジが、フランスの第6代大統領に就任した。サルコジ新大統領は「国民は過去との断絶、変化を選択した」と語り、変革を強調した。メディア報道を見ても、フランス国民は変化を求めたとする論調が目立つ。
 しかし、サルコジ自身はシラク大統領と同じ与党・国民運動連合の中で内相や財務省として辣腕を振るってきた与党政治家でもある。政権内部にありながら変革のレトリックを巧みに使い国民の人気を博していく手法は、「自民党をぶっ壊す」の一言で政権を獲得した小泉純一郎をどこか彷彿させる。
 確かにフランスには待ったなしの問題が山積している。グローバル化の流れの中で世界的に規制緩和が進む中、フランスは国内産業や労働者を保護してきたため、その結果、国際競争力の低下に悩まされ、失業率は10%に迫る勢いだ。都市郊外に住む移民の2世、3世の2割が職にありつけず、差別と貧困に苦しむ彼らは、いつ2005年の暴動が再発してもおかしくない状況だ。
 世界でも希に見る手厚い社会保障制度を享受してきた国民も、一定の改革の必要は感じているが、政府がいざ社会保障に手を付けようとすれば、ゼネストが待ち受けているのが実情だ。どこの国にあっても、既得権益の打破はたやすいことではない。
 パリ第十大学大学院で学び、フランスの思想・政治を研究対象とする哲学者・萱野稔人氏は、日本人が抱くフランスへの幻想の大きさを指摘する。自由・平等・博愛を謳いながら、深刻な人種差別がはびこる国内。国際的にも、アメリカの対抗軸を装いながら、現実には米国の縮小版のような大国のエゴむき出しの外交政策を北アフリカでは展開している。
 イラク戦争への強行な反対も、石油のユーロ決済を求めたイラクをアメリカが叩き、フランスはこれを擁護するという構図が、その背後にあったと萱野氏は指摘する。イラク戦争も所詮はアメリカとフランスの単なる覇権争いに過ぎないと言うのだ。
 萱野氏は、グローバル化が進み、国境がなくなるかのように見えるこの世界では、むしろ、国家の権力は増大していくと説く。自由化や民営化によって国家のプレーヤーとしての役割は縮小していくが、その分ルールの遵守を監視する監視者としての役割や、それを遵守させるための警察や検察、金融当局が持つ暴力の行使者としての役割は増大していくと言うのだ。そしてサルコジは、忠実にその国家の論理に従い、経済の自由化を進める一方で、治安問題には強硬策で臨むことで、「改革」を巧みに演出していくだろう。そうした現実の元で、社会から排除された若者たちには、もはや暴動を起こすぐらいしか残された道はない。それがグローバル化した世界の偽らざる現実の姿であることを、フランスの大統領選挙が改めて浮き彫りにしているようだ。
 気鋭の論客・萱野氏とともに、フランス大統領選の結果から見えてくるグローバル化の現実とは何かを、あらためて考えた。

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