2013年3月30日
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一票の格差訴訟続報
選挙無効判決は裁判所の危機感の表れ

ニュースコメンタリ―

 最大2.43倍の「一票の格差」があった昨年12月の衆院選の合憲性と無効を求める裁判では、3月28日までに、全国16ヵ所の判断が出そろった。条件付きながら初めて選挙そのものを無効としたものが2件、違憲判断が14件、違憲状態が2件だった。一票の格差裁判で選挙の無効が判断されたのは、これが初めて。
 選挙の無効判断を受けた広島県選管が29日、上告する方針を決めたことで、最高裁大法廷が年内にも統一判断を示すことになる。
 これまで一票の格差判断では1976年の「違憲状態」判決以来、選挙が違憲と判断されても、選挙そのものを無効としない「事情判決」が繰り返されてきた。選挙を無効とすることで生じる憲法が想定しない事態を回避するためにというのが、裁判所の判断だった。
 しかし、25日、26日両日の広島高裁と広島高裁岡山支部は、2.34倍の格差があった2012年の選挙が11年に違憲判決を受けていたにもかかわらず、立法府はそれを是正することなく、更に格差が2.43倍に拡大した状態のまま総選挙に突入したことはもはや看過できない状態にあるとして、一定の条件付きながら、選挙そのものを無効とする初の判断を下した。
 投票という民主主義におけるもっとも基本的な権利を蔑ろにし続ける立法府に対して厳しい「ノー」を突きつけた両裁判所の英断は大いに評価する。が、とは言え、いよいよ一票の格差問題は憲法が想定していない次元に突入したことだけは間違いない。
 そもそも選挙が無効ということになれば、判決が確定した段階でその選挙で選ばれた衆議院議員は失職することになり、違憲状態を解消するための区割り法案の改正などができなくなってしまう可能性がある。
 無効判決について、一橋大学大学院法学研究科の只野雅人教授は、高裁の無効判決は広島1、2区と岡山2区を対象としたものだが、選挙区の区割りは全国的に連動しているため、判決の影響は事実上、全選挙区に及ぶ可能性があると言う。その上で、それは憲法が想定しない事態を招くため、最高裁は選挙を無効とする判断は避けるとの見通しを示す。
 一方、大東文化大学法学部法律学科の森稔樹教授は、無効判断はあくまで当該選挙区のみを対象としたもので、その効力は他の選挙区には及ばないとの見方を示す。また、選挙が無効になることで議員が失職し区割り法案の作成に参加できなくなるとの指摘については、市長のリコール選挙で選挙が無効と判断された後も、選挙後に制定された法律などは有効とされた事例を示した上で、国会にもこれを適用するしかないと語る。
 一国において憲法が想定しない事態が生じた時、その事態に対処する際にわれわれは何を参照すればいいのか。初の無効判決をわれわれはどう受け止めるべきなのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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