現行の生活保護制度では、健康で文化的な生活を守ることはできない
弁護士
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先週のNコメで一票の価値をめぐる札幌高裁による画期的な判決をご紹介したが、この点について多数の視聴者から、それが1976年の最高裁判決を踏襲するものであるとのご指摘をいただいた。1976年4月14日、一票の価値をめぐる裁判で最高裁は今回の札幌高裁とほぼ同様の判決を下していた。
この判決で最高裁は、違憲判決に伴いその選挙を無効とした場合、そうすることで直ちに合憲状態がもたらされるわけではないことや、現職議員が議員資格を喪失するために、既に議決された法律の効力にも影響を与えるなどの問題が生じることなどを指摘した上で、これを「明らかに憲法の所期しない結果」であるとして、選挙そのものは無効としないこともあり得るとの判断を示した。一票の価値の格差は違憲だが選挙そのものは無効としないことを容認するこの最高裁判決が、その後の一票の価値訴訟における決定的な前例となった。
また、1976年の同判決は事情判決の妥当性にも言及していた。同判決の中で最高裁は、選挙の訴訟には事情判決を適用しないことが定められている公選法の219条は「高次の法的見地から」適用しないとの判断を示した。選挙訴訟では本来は事情判決は禁じられているが、諸般の事情から事情判決を下さざるを得ないという、いわば「事情判決のための事情判決」が下されたことで、その後の一票の格差訴訟における事情判決の判例をなったのだった。
選挙を無効としない「事情判決」を容認する判断を示したこの最高裁判決では、大法廷に参加した14人の裁判官のうち8人が多数意見、6人が反対意見を述べる僅差での議決だった。反対意見の中には、仮に選挙そのものを無効としても、全議員の議員資格を剥奪する必要はなく、違憲状態にある選挙区の選挙のみを無効とすればいいことから、憲法98条が求める「違憲であれば無効」の原則や事情判決を禁じた公選法の219条の規定を安易に曲げるべきではないとする意見もあった。