2013年10月5日
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消費税増税前にやるべきことはどうなった

 安倍首相は10月1日、来春の消費税の引き上げを表明した。「社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです」、「消費税収は、社会保障にしか使いません。当然、歳出の無駄は不断に削減していきます」などと述べて、逼迫する社会保障制度の財源問題を改善させる目的を強調した。
 来春の増税によって国は約6兆円の税収増が見込めるが、安倍首相は5兆円規模の経済対策を実施する意向で、来年度の増収幅は1兆円程度にとどまる見込みだ。
 しかし、これまでマル激では消費税増税の前にやるべき課題があることを繰り返し指摘してきた。これらの課題はほとんどすべて手つかずのままだ。
 まずは嘉悦大学の高橋洋一氏が指摘するように、日本の税・社会保障制度には「大穴」が開いており、それを埋めることによって20兆円前後の取りっぱぐれが解消される。このことはこれまでも多方面から指摘されてきた。先の参議院選挙ではみんなの党が、これを選挙公約に謳っている。
 例えば、国税庁が把握できている法人数が280万法人あるのに対し、日本年金機構が捕捉できている法人数が200万しかない。まず80万法人からの社会保険料の取りこぼしを解消しなければならない。加えて、納税者番号制の導入や国税庁と年金機構を合併させることで税と社会保障料の徴収を一本化した歳入庁の設置、消費税の納税を書類で裏付けるインボイス制度の導入などで、合わせて毎年18兆から20兆円の増収が期待できると高橋氏は指摘する。 日本は1990年代から国民一人あたりの税と社会保障の負担の度合いを表す国民負担率を低下させ続け、今や日本はアメリカと並び先進国では最も国民負担率の低い国となっている。公的な社会保障の福祉サービスは世界の中でも中程度の給付を続けている。中福祉低負担の不均衡が続けば、財政に大きな負荷がかかるのは当然だった。
 増税に踏み切った安倍首相は「世界に冠たる日本の社会保障を維持するための増税」と言うが、増税することで社会保障制度を拡充する用意があるのか。あるいは、3%や5%程度の消費増税で、現在の社会保障制度が本当に維持できるのか。それとも思い切って給付を削減するのか。増税は発表されたが、その前提となる税と社会保障のビジョンは一向に見えてこない。
 以前にマル激に出演した経済学者の野口悠紀雄氏は、「増税による財政再建はできない」として、税で現在の日本の社会保障を賄うためには消費税を30%以上に上げる必要があると指摘している。それができないのであれば、給付を減らすしかないというのが野口氏の結論だった。
 増税に先立つ税・社会制度の大穴を埋めることもせず、定数削減などの自らの身を切る改革も結局は行わず、そして社会保障の未来ビジョンも提示されないままの、ないないづくしの増税に踏み切った安倍政権の判断を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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