2013年12月28日
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参院選「一票の格差」訴訟
選挙制度に裁判所はどこまで介入すべきか

東浩紀氏(哲学者)
ニュース・コメンタリー (2013年12月28日)

今年7月の参院選挙における一票の格差をめぐる裁判の判決が12月26日で出揃い、争われていた16件のうち3件を違憲、13件を違憲状態とするいずれも厳しい判決となった。しかも、3件の違憲判決のうち、1件は選挙そのものを無効とするものだった。
 今年7月の参院選の「一票の格差」は最大で4.77倍だった。
 今後、最高裁の最終判断を待つことになるが、首都大学東京准教授で憲法学者の木村草太氏は、一票の格差の判決の意味を見極める上で、司法が国会の裁量をどこまで認めるべきかが大きな論点になると指摘する。
 確かに近年最高裁は、投票価値の平等をより厳しく求めるようになっている。しかし、選挙区を都道府県単位で区画している現在の選挙制度では、現行の議員定数を維持すると、どれだけ平等を追求しても衆院で1.6倍、参院では4.3倍の格差が残ってしまうのだという。
 都道府県単位の区画設定と議員定数を何人にするかは国会の裁量の範囲であることを最高裁も認めていることから、実はこれまで通り国会の裁量を認めれば、一票の格差を限りなく1対1に近づけることは不可能な状態にある。
 仮に最高裁が衆院で1.6倍、参院で4.3倍の投票価値の格差を違憲、あるいは違憲状態と判断した場合、それは現行の都道府県別の選挙区画や議員定数にまで踏み込んだ判断を下したことになるというわけだ。
 しかし、木村氏は最高裁が都道府県にそれぞれ1議席を割り当ててから、残りを人口比例配分する一人別枠方式については、明確に否定をしていると指摘する。世界にはあえて選挙区の人口密度や面積を考慮することを求めているデンマークやノルウェーなどのような国もあるが、日本の場合、それは憲法上許されないと最高裁は判断しているということになる。
 国会の裁量といっても、国会議員自身の身分に関わる制度の変更を国会の裁量に委ねることには、元々無理がある。であるが故に最高裁は近年、より踏み込んだ判決を出すようになった。しかし、国会が投票価値の格差の是正に本気で取り組まないために、いよいよ最高裁によって本来国会の裁量とすべき都道府県別の区画制度や定数にまで司法が踏み込む可能性すら出てきているというのが、今の一票の格差問題の現状ではないだろうか。
 司法がどこまで選挙制度に踏み込むことが妥当なのか。国民の代表たる国会の裁量はどこまで尊重されるべきなのか。憲法学者の木村氏のインタビューをもとに、哲学者の東浩紀氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

東 浩紀あずま ひろき
(哲学者)
1971年東京都生まれ。92年東京大学教養学部教養学科卒業。99年東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。東京大学客員助教授、早稲田大学教授、東京工業大学特任教授などを歴任。2012年より株式会社ゲンロンの代表取締役社長兼編集長を兼務。著書に『セカイからもっと近くに』、共著に『福島第一原発観光地化計画』、『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』など。  
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