2013年6月1日
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5金スペシャル
今、アフリカ映画が熱い

吉田未穂氏(シネマアフリカ代表)
マル激トーク・オン・ディマンド 第633回

 5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。5金ではこれまで何度となく映画を特集してきたが、今回は初めてアフリカ映画を取り上げる。
 奇しくも6月1日から3日までの3日間、横浜でアフリカ開発会議(TICAD)が開かれている。1993年に日本政府の肝いりでスタートしたこの会議は、その後も5年毎に日本で開催されており、今回で5回目だ。安倍首相はアフリカ各国の首脳が勢揃いした開会式で、政府開発援助(ODA)約1.4兆円を含む最大で3兆円超の官民支援を表明するなど、54カ国10億人規模のアフリカ市場を意識して、日本の関与を強める構えだ。そこで今回の5金では、アフリカ映画を日本に紹介する市民団体「シネマアフリカ」代表でアフリカに造詣が深い吉田未穂氏とともに、アフリカ映画から見える「今のアフリカ」を考える。
 まず取り上げたのはナイジェリア映画の『恋するケータイ in ラゴス』(原題:PHONE SWAP)。ナイジェリアはいまや世界有数の映画国家になりつつある。制作本数だけでみると年間2400本を超えて既に世界ナンバーワンとも言われている。そんな活況を前に関係者はナイジェリア映画界のことを、ハリウッドをもじった「ノリウッド(Nollywood)」と呼ぶほどだ。『恋するケータイin ラゴス』では、男女二人が携帯電話を取り違えるという設定のもとで、ナイジェリアの都市部と地方の格差・落差が浮き彫りになるコメディ映画だ。われわれはアフリカを考える時、ある種のステレオタイプな状況を思い浮かべがちだ。貧困や虐殺、環境破壊などいずれも現在進行形の問題だが、アフリカはそれだけではない。ナイジェリアの首都ラゴスの中心部には高層ビルが建ち、空港は近代的な機能を備えている。街ゆく人はおしゃれに着飾り、スーツに身を包んだビジネスパーソンも行き交う。この作品は当たり前のことだが、われわれには、なかなか馴染みのないアフリカの現実を映している。
 次に取り上げたのは『アフリカ・パラダイス』(原題:AFRICA PARADIS)。アフリカとヨーロッパの立場をそっくり入れ替えた世界が描かれる作品だ。時は2033年。「アフリカ合衆国」が世界一の超大国となり、ヨーロッパは没落してフランスの失業率は60%以上に達し、人々はアフリカへの移住を夢見ている。一方、裕福なアフリカでは白人はずるくて怠け者だという悪評が定着していて、ヨーロッパからの移民政策をめぐっては容認派と反対派が対立する。作品で白人が直面する困難は、現在のアフリカが抱える悩みそのものだ。現状では、知識階級に属するアフリカ人も国内では働き口がなく、かといって国外に出ても活路は乏しく劣悪な立場に甘んじるしかない。日本国内のアフリカン事情にも詳しい吉田氏は「日本にもそんなアフリカ人が沢山暮らしている」と話す。また、アフリカ映画は複雑で難しいテーマでも、コメディタッチで明るいトーンで描かれる作品が多いという。吉田氏はアフリカの人々は自分たちのあまりにも長く辛い苦渋に対して、「笑うしかなかった」という背景があると指摘する。
 われわれはアフリカを考える時、知らず知らずのうちに、アフリカは常に弱者であり、それを「支援してあげている」という上からの目線や態度で受け止める傾向がある。そのため、西洋諸国の描くアフリカは、どうしてもそのようなものに陥りがちだ。そして、自分たちが作り上げた先入観やステレオタイプによって、更にそのイメージが固定化していく。アフリカ人の手で作られた映画には、ありのままのアフリカが描かれているかもしれない。映画を通じて見えてくる肌感覚のアフリカについて、ゲストの吉田氏とともにジャーナリストの神保哲生と宮台真司が議論した。

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吉田 未穂よしだ みほ
(シネマアフリカ代表)
1974年東京生まれ。98年東京都立大学人文学部卒業。2001年同大学大学院地理学専攻課程修了。専門学校講師などを経て、06年シネマアフリカ設立、代表に就任。
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