2015年5月23日
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これが火山国日本の生きる道

高橋正樹氏(日本大学文理学部教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第737回

 日本は世界でも有数の火山国だ。しかし、これまでわれわれは、火山噴火のリスクに対しては、あまり現実的な脅威とは見なしてこなかった。
 ところが、昨年9月に岐阜県と長野県の県境にある御嶽山が水蒸気爆発を起こし57人が亡くなったのに続き、今年の4月下旬からは首都東京からほど近い神奈川県の箱根山で火山性の地震が頻発し、危険な地域への立入が禁止されるようになるなど、火山の活動が現実的な脅威となってきた。更にここにきて群馬県と長野県にまたがる浅間山でも火山性地震が増加したり、鹿児島県の口永良部島で火山性地震が頻発し始めるなどしたことで、日本中で火山の動きが活発になっているかに見える。
 箱根山は東京に一番近い活火山で、火山学者で日本大学文理学部地球システム科学科教授の高橋正樹氏によると、約6万年前の大噴火では神奈川県のほぼ全域が火砕流堆積物で覆われたという。
 もし今日、箱根山で6万年前と同じような大噴火が起きれば、神奈川県が全滅し800万人以上の犠牲者が出るほどの大被害が起きることになるが、高橋教授は今回の箱根山の火山活動では、震源の浅い地震を繰り返しながら、水蒸気爆発やマグマ噴出などのいわゆる噴火までには至らず、緩やかに収束していく可能性が高いという。ただし、巨大噴火ほどではないにせよ、水蒸気爆発、マグマ噴出が発生した場合、カルデラに囲まれた芦ノ湖を含む箱根一帯は、火砕流による被害も想定され、観光地としては大きな打撃を受ける可能性は否定できないという。箱根といえば温泉が有名だが、箱根山は過去23万万年の間に11回の巨大噴火を起こしてきた、日本有数の活火山なのだ。
 こうした火山の大規模な噴火活動、いわゆる「巨大噴火」や「破局噴火」は、何も箱根山に限った話ではない。むしろ、日本のカルデラで起きた過去の巨大噴火と比べると、6万年前の箱根山噴火は規模、被害範囲とも小さいものだと高橋氏は言う。
 日本で最も新しい巨大噴火は約7300年前に鹿児島県の薩摩半島の先の海中にある「鬼界カルデラ」で起きた巨大噴火で、この噴火で当時南九州に存在していた縄文期の貝殻文系土器文化や塞ノ神式土器文化が滅亡したといわれている。他にも南九州では約2万9000年前に「姶良カルデラ」で、約9万年前には「阿蘇カルデラ」でそれぞれ超巨大噴火が起きている。姶良カルデラの超巨大噴火によって南九州のシラス台地が形成され、日本列島全体が数センチ以上の火山灰で覆われたと推測されるという。
 巨大噴火、破局噴火に分類される火山活動は過去12万年間に日本で17回、およそ7000年の周期で発生している。直近の破局噴火が7300年前の鬼界カルデラ噴火であることを考えると、現在日本列島でいつ巨大噴火が起きてもおかしくないとも言えるが、巨大噴火を予知することは不可能だと高橋教授はいう。
 むしろ日本の問題は予知の如何にかかわらず、万が一の事態に備えるだけの実効性のある防災計画が整備されていないことにあると高橋氏は指摘する。
 火山の大噴火は数千年から数万年の周期で起きるもののため、次の大噴火がいつ起きるかはわからない。しかし、われわれが日本という火山国に住む以上、いつかは必ず大噴火に直面することになる。また大噴火まで至らない場合でも、小規模、中規模な噴火はいつあってもおかしくない。
 その現実を直視し、万が一の時に備えた防災意識と防災対策を行うことが肝要となるが、残念ながら現在の日本では、東日本大震災でも露呈した行政まかせの防災意識が依然として横行している。御嶽山の噴火の時にも指摘されたことだが、歴史上大噴火を繰り返してきた箱根山周辺の観光地には、コンクリート製のシェルターさえ整備されていない。また、姶良カルデラの噴火とその影響を想定した川内原発の緊急対応も不十分だと高橋氏は指摘する。
 地震、津波、台風、土砂崩れ等々、数多くの災害と隣り合わせに生きているわれわれ日本人は、火山リスクとはどう向き合えばいいのか。火山学者で過去の破局噴火とそのメカニズムにも詳しいゲストの高橋正樹氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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