2015年5月30日
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5金スペシャル
映画が描く沖縄基地問題と日本の選択

ジャン・ユンカーマン氏(映画監督・ジャーナリスト)
マル激トーク・オン・ディマンド 第738回

 5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金ではエミー賞受賞監督のジャン・ユンカーマン氏をゲストに迎え、第二次大戦から現在に至る沖縄を描いた同氏の最新ドキュメンタリー映画『沖縄 うりずんの 雨』を取り上げながら、戦後70年経った今も日本が解決することができていない「沖縄の米軍基地問題」とわれわれがどう向き合うべきかを議論した。
 沖縄には、日本にある米軍基地や関連施設の約74%が集中し、沖縄本島の18%が戦後米軍によって接収されたままの状態にある。ユンカーマン氏は、沖縄の基地問題を「日本のみならずアメリカの問題でもある」との認識の下で、『沖縄 うりずんの雨』を製作したという。そのため、この映画では沖縄戦の歴史やその後のアメリカによる占領統治、日本への返還、そして現在の米軍基地問題につながる沖縄の戦後史が網羅されているが、沖縄の視点と並行して、常にアメリカ側の視点が描かれているところに、この作品の大きな特徴がある。
 ユンカーマン氏はアメリカの沖縄に対する姿勢の背後には、覇権国特有の、力で勝ち取ったものは自分たちの好きにしていいとの認識が根強く残っていると指摘する。その意味ではアメリカにとって沖縄は「戦利品」に過ぎない。
 しかし、日本政府が沖縄に対し米軍基地負担の74%を押しつけ、日米地位協定なる取り決めの下でそこに住む人々が蹂躙されるのを指をくわえて見ている裏には、本土の人間の沖縄に対する差別意識があることも強調する。
 映画には1995年に沖縄で起きた少女暴行事件の犯人のインタビューが収められている。この事件によって、戦利品としての扱いを強いられてきた沖縄の怒りが頂点に達し、事件そのものやその後の大規模な県民集会は日本にとどまらず、広く世界に報じられることとなった。
 しかし、沖縄の問題は、アメリカでは広く認知されているとは言い難いとユンカーマン氏は言う。アメリカの安全保障政策によって沖縄がどれほどの犠牲を強いられているか、米軍という暴力装置によって沖縄県民がどれほどの被害を被っているか、日米地位協定によって守られている米兵が沖縄で問題を起こしても不問に付され続けているという事実などは、アメリカではほとんど知られていない。映画では沖縄に対する暴力の歴史とともに、米軍による暴力の背景にある、米軍内における女性兵士への性暴力の問題にも触れて、併せて警鐘が鳴らされている。
 沖縄県の翁長雄志知事は、5月27日から訪米し、在沖縄米海兵隊の再編にともなってその受け入れ先となっているハワイの州知事や米政府関係者との会談を通じて、沖縄の主張を直接アメリカに届けようとしている。ユンカーマン氏は、これまでは抗議だった沖縄の声は、いまや主張になっていると指摘する。辺野古沖に基地は作らせない、沖縄に基地はいらないという沖縄の人々の強い思いが主張となって、安全保障政策を推し進める日本政府、そしてその背後にいるアメリカと真っ向からぶつかっている状態だという。
 映画のタイトルにある「うりずん」とは、沖縄で草木が芽吹く3月頃から梅雨入りする5月頃までの時期を指す、沖縄の言葉だという。70年前のうりずんの時期、日本は激しい地上戦を沖縄で戦い、2万8000人の日本兵はもとより、10万人もの沖縄市民が犠牲となった。沖縄ではこの時期になると当時の凄惨な記憶が蘇り、体調を崩す人も多いという。しかし、ユンカーマン氏はうりずんという言葉に、実りある季節の準備期間として希望の意味も込めたと話す。
 果たして沖縄の希望は実るのか。沖縄の覚醒は日本に何をもたらすのか。沖縄戦から現在に至る歴史や現在の米軍基地の辺野古沖への移設問題、日米の安全保障政策の歪みと今後に向けた課題などを、ゲストのジャン・ユンカーマン氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
 番組ではまた辺野古の反対運動をドキュメントした三上智恵監督による「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」、芥川賞作家目取真俊氏の小説を東陽一監督が映画化した「風音(ふうおん)」を取り上げた。

 
ジャン・ユンカーマン
(映画監督・ジャーナリスト)
1952年米国ミルウォーキー生まれ。74年スタンフォード大学東洋文学科卒業。ウィスコンシン大学大学院修士課程修了。監督作品に『映画 日本国憲法』、『劫火・ヒロシマからの旅』(88年・米 国アカデミー賞記録映画部門ノミネート)、『夢窓・庭との語らい』(92年・エミー賞受賞)、『チョムスキー9.11』(02年)など。
安全保障関連法
沖縄米軍基地問題
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