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2008年06月21日公開

日本の「ガラパゴス」携帯の持つ可能性と課題

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第377回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

総務省総合通信基盤局事業政策課長

1960年愛媛県生まれ。84年一橋大学経済学部卒業。同年郵政省入省。郵政大臣秘書官、電気通信局事業政策課調査官、在米日本国大使館IT政策担当参事官、総合通信基盤局料金サービス課長などを経て07年より現職。著書には『インターネットは誰のものか』、『世界一不思議な日本のケータイ』ほか。

著書

概要

 日本でもいよいよiPhoneが発売される。昨年6月から米国で先行発売され、すでに100万台を売り上げる人気を博しているiPhoneだが、規格の違いから、日本では発売されていなかった。このほど7月11日にソフトバンクから発売されることが正式に決まったが、これはiPhoneが現在日本で普及している3Gという携帯電話の規格を採用したことで初めて可能になったものだ。日本の携帯市場は、昨年末で契約数1億台を突破するほど世界有数の市場だが、世界の趨勢とは異なる規格を使っている上、機能面でも独自の進化を遂げており、「ガラパゴス」と揶揄されるほど、世界でもかなり特異な市場となっている。
 日本の「ガラパゴス」状態の証左と名指しされるのが、端末メーカーのシェアだ。ノキア、モトローラ、サムスン電子など世界市場で上位に入る端末メーカーの携帯が、なぜか日本ではほとんど普及していない一方、日本では幅をきかせている日本の端末メーカーが、国外ではまったくシェアをとれていない。日本では25%のシェア占めるシャープや、パナソニック、富士通などの国産メーカーは世界市場では、合わせても10%以下のシェアを占めるに過ぎない。
 また、機能面でも日本の携帯電話はかなり特殊だ。世界の多くの国々で携帯電話は単なる通話ツールとして普及しているのに対し、日本ではメールやデータ通信に使用される比重がかなり大きい。それが多機能高性能の端末を次々と生み出し、データ通信に適した第3世代の規格が世界に先駆けて普及した背景でもあるが、それが逆に日本の携帯料金の高さの原因となっている。
 実際、日本の携帯電話料金は他国と比べてとても割高だ。もともと通話料金が高い上に、高価な高性能端末を安く販売する代わりに、毎月の通話料金でこれを回収することを可能にする販売奨励金分が上乗せされているからだ。日本では極端な場合端末は無料で購入できるが、これはキャリアから販売店に販売奨励金が支払われているためだ。この奨励金のために、販売店は本来の端末原価より安い価格で販売でき、キャリアは月々の通話料でそれを回収する仕組みになっている。販売奨励金のおかげで実際は高価な高性能端末が売りやすくなっている反面、ユーザーは高い通話料金を払わされることになる。同じ端末を長く使う人ほど、また通話の多い人ほど、損をする仕組みでもあり、不公正との指摘も根強い。
 こうした日本独自の「携帯文化」が、海外のメーカーが日本でシェアを伸ばせない原因であると同時に、日本のメーカーが日本で培った技術を世界で活かせない理由にもなっている。しかし、総務省でモバイルビジネスの振興の旗振り役を努めてきた谷脇康彦氏は、日本のこの特殊な携帯文化こそ、これから日本にとっては大きなチャンスになると語る。高速でネットにアクセスできる3G携帯がこれほど普及している国は他にはなく、海外の企業は日本で成功することが、明日の世界の携帯電話ビジネスの成功を約束すると見て、日本進出の機会をうかがっていると指摘する。見方によっては、日本が世界から取り残されているのではなく、世界の一歩先をいっているというのが、谷脇氏の見立てだ。
 しかし、日本がその技術的な優位性を確たるものにするためには、一層の規制緩和と競争が不可欠であると谷脇氏は指摘する。谷脇氏も参加する総務省の研究会「モバイルビジネス研究会」(通称モバ研)は、販売報奨金の見直しや各キャリアがユーザーの囲い込みのために行っているSIMロックの解除、MVNO(ネットワークを持たないサービス業者)の新規参入の促進などの提言を行っている。
 日本の携帯電話市場は、キャリアの力が圧倒的に強く、キャリアを中心とした垂直統合型の関係の中に、端末メーカーや代理店、コンテンツ・アプリケーション業者などが極めて閉鎖的な関係を築いている。また、コンテンツ面でも日本ではキャリアによる囲い込みが当たり前のように行われ、キャリアに認定されない限りは、公式サイトからはたどり着けなくなっている。通常のサイトが「勝手サイト」などと呼ばれていることも見ても、キャリア主導であることは明らかだ。谷脇氏は、規制緩和によって、このキャリア主導の体制を、よりユーザー主導の体制に変えていくことが日本の携帯市場が世界に通用するための条件となると説く。
 課金や認証システムをキャリアから切り離せば、MVNOの参入は進み、新しいビジネスが登場する可能性も高い。現に、公式サイトを上回る水準で、勝手サイトは伸びており、利用者側には新たなコンテンツやサービスを求めるニーズは高まっている。谷脇氏は、いずれは携帯電話市場も、インターネットの有線接続サービスのように、利用者が端末からネット接続サービス、コンテンツに至るまで自由に選択でき、参入が容易な水平分業型ビジネスを目指していくべきであり、将来は有線も、携帯の垣根を越えて、大きなネットワーク上であらゆる端末がつながった状態が作り出されていくだろうと、携帯電話の未来図を描く。
 今回は、iPhoneの日本上陸の意味と、日本の携帯電話市場が世界の流れとどのように乖離しているのか、またそれは私たち消費者にとっては何を意味するのか、そして、未来の携帯電話はどのように進化していくのかなどを、総務省の携帯電話行政のキーマンと議論をした。

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