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2018年07月28日公開

だから新聞は生き残れない

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第903回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

元朝日新聞社販売管理部長

1955年兵庫県生まれ。77年東京大学文学部卒業。同年朝日新聞社入社。東京本社販売局、流通開発部長、販売管理部長などを経て2015年退社。著書に『新聞販売と再販制度』、『新聞社崩壊』。

著書

概要

 新聞やテレビなどの既存のメディアの不振が伝えられるようになって久しい。しかし、ここに来て、いよいよ新聞がやばそうだ。

 朝日新聞で長年販売を担当してきた畑尾一知元販売管理部長は、この10年間で新聞の読者が25%も減っていることを指摘した上で、今後10年間で更に30%も減るとの見通しを示す。このままでは全国紙を含め、既存の新聞の中には経営が立ち行かなくなるところが早晩出てくることが必至な状況となっている。

 新聞が苦境に陥っている理由として、畑尾氏は特に若者の新聞離れが顕著になってきていることを指摘する。

 実際、NHKの調査では新聞を読んでいる人の割合が10代で3.5%、20代でも5.5%まで落ち込んでいる。若者の間ではもはや20人に1人も新聞を読んでいないのだ。全体でもこの20年で新聞を読む人の数は52%から33%まで低下しており、半数以上の人が新聞を読んでいると答えた世代は60代と70代だけだ。早い話が、今でも熱心に新聞を読んでいる人は社会の中でも少数派、いやむしろ珍しい存在になりつつあると言っても過言ではないだろう。

 なぜ新聞がこうも読まれなくなったのかについて畑尾氏は、値段の高さ、記事の劣化、新聞社に対する反感の3つを主な原因としてあげる。

 朝日新聞を例に取ると、1970年代に700円台だった月極の購読料はその後、高騰を続け、1980年代には2000円台、1990年代には3000円台まで値上げされている。これは紙代の上昇などをそのまま反映したものだそうだが、その間、新聞社は人件費やその他のコストを削るなどの経営努力をほとんど何もしてこなかったと畑尾氏は言う。

 それでも新聞が情報発信を独占できている間は、やむなく新聞を取っている人が多かったが、インターネットが登場し、新聞に頼らないでも必要最低限の情報が入手できるようになると、毎月4000円近くもする新聞の購読料の割高感が際だつようになってしまった。

 畑尾氏はそれでも、紙の新聞には一定のニーズがあるとの見方を示す。新聞社が社員を半分に削り、紙面も半分以下にしてスリム化を図れば、新聞社は生き残ることが可能かもしれない。しかし、既存の新聞社には、それはできないだろうと畑尾氏は言う。要するに、破綻しているのは新聞社のビジネスモデルではなく、新聞社の経営体質の方なのだ。

 朝日新聞の平均給与は1200万円にのぼるという。再販制度に守られ、記者クラブなどの情報利権を独占しながら、高給を食む若い記者たちが臆面もなく取材現場にハイヤーで乗り付けるような新聞社の体質が根本から変わらない限り、既存の新聞社に未来はないことは明らかだ。

 実際、新聞を読む人の数はものすごい勢いで減っているにもかかわらず、日本新聞協会が毎年発表する新聞の発行部数は、そこまでは落ち込んでいない。そのギャップはいわゆる「押し紙」として、販売店に押しつけられているのが実情だと畑尾氏は語る。

 新聞社から出資先の地方の放送局などへの天下りも、常態化している。一体、いつまで新聞社はこのようなことを続けるつもりなのだろうか。

 ただ、新聞社に忘れて欲しくないことは、これまで新聞社の中にプールされてきた職業としてのジャーナリズムのノウハウは、再販など数々の特権を容認することで市民社会が新聞社の経営を支えたことによって確立され維持されてきた、いわば公共的財産だ。堕落した経営体質故に新聞社が消えてなくなるのは自業自得としか言いようがないが、公共財産としてのジャーナリズムまで道連れにされては困る。

 朝日新聞の販売管理部長を務めた畑尾氏、新聞社経営の現状とその体質、生き残りの可能性などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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