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2018年08月18日公開

移民はいないことになっている世界4位の移民大国日本

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第906回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

ライター・編集者・放送作家

1973年沖縄県生まれ。98年横浜国立大学経済学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、2002年より現職。著書に『コンビニ外国人』、『地と水の一滴 沖縄に散った青年軍医』、共著に『死後離婚』など。

著書

概要

 日本が今や、世界第4位の移民大国であることを、ご存じだろうか。

 OECDによると、2015年の外国人移住者統計で、日本に移住した外国人の数は前年比約5万5千人増の約39万人となり、前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇したという。ちなみに2015年のトップ3は1位がドイツ(約201万6千人)、2位が米国(約105万1千人)、3位が英国(47万9千人)だった。日本はこれに次ぐ世界第4位の移民大国なのだ。

 しかし、ちょっと待って欲しい。日本は基本的に移民の受け入れをしていないはずではなかったか?

 実は国連やOECDでは「移民」の定義は、その国に1年以上住んでいる人ということだ。観光ビザで入国している観光客や短期の滞在者以外は、その国に居住している立派な住民であり、定義上はすべて移民となる。現在日本には約250万人の外国人が住んでいるが、そのうち少なくとも26万人は就業を目的とした外国人実習生だ。また、海外からの留学生約26万7千人のうち、実際は出稼ぎ目的の「学生」もかなりの比率を占めているという。

 人口減少と少子高齢化に瀕した日本は今や人手不足が深刻で、外国人労働者に頼らなければもはや日本経済は回らない状態にある。しかし、日本は移民を認めていないし、定住に繋がるとの理由から、基本的には外国人の労働者を受け入れていない。そのため、現在日本で働く外国人のほとんどが、名目上は国際貢献を目的とする「外国人技能実習生」や週28時間まではアルバイトが認められる「留学生」という制度を利用して、事実上の出稼ぎに来ている状態なのだ。

 特に最近外国人の店員を見かけることが特に多くなった職種の中にコンビニがあるが、近著「コンビニ外国人」が好評を博しているライターの芹澤健介氏によると、コンビニで働く外国人は基本的には全て留学生なのだそうだ。芹澤さんが取材をしたコンビニの中には、自給1000円でアルバイトを募集しても、1年以上も日本人の応募が一人もなかったところもあるという。そうした人手不足を外国人留学生に埋めもらうことで何とか回っているコンビニは多い。

 芹澤氏によると、コンビニは日本に来て日が浅い外国人には比較的人気のあるアルバイト先だそうで、その大きな理由が、日本語ができなくても店番が務まるのと同時に、とは言えある程度、客との接点があるため、日本語の勉強にもなるからだという。取材した留学生の中には、コンビニで働くことで日本人の食生活や文化がよく理解できるようになったと答えた人もいたという。

 しかし、外国人留学生も日本への滞在日数が長くなり、日本語もマスターしてくると、忙しい割には給料が安いコンビニは必ずしも割のいい仕事ではなくなってくるそうで、留学生もコンビニを卒業して、もっと割のいい仕事へと移っている人が多いと芹澤氏は語る。

 働く目的で来ている外国人が127万人を超える一方で、日本は単純労働者を受け入れず、技能実習生だの留学生だのといって、本来の目的とは異なる形で外国人の受け入れを続けていることで、様々な問題も起きている。

 外国人技能実習生を支援する「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」の共同代表を務める指宿昭一弁護士によると、外国人技能実習生に対するパワハラ、セクハラや、低賃金で長時間働かせる違法な労働の強要などが増えているという。実習生の多くは日本に来るために多額の手数料をブローカーに支払っている場合が多く、その返済に追われる身のため、たとえ人権を無視したような扱いを受けても、仕事を辞めることができない。それをいいことに、安い賃金で外国人実習生をこき使おうとする受け入れ事業者が後を絶たないと、指宿氏は指摘する。

 また、留学生についても、学業が本業のため、アルバイトは本来は週28時間以内というルールがあるが、複数の職場を掛け持ちすることで、ほとんどの時間をアルバイトに費やし、勉強どころではない学生も少なくないという。要するに、彼らの多くが実際は日本に出稼ぎに来ているのに、日本では普通には働けないので、留学生という制度を利用しているということのようだ。

 要するに、実際は日本が外国人労働者無しでは回らなくなっていることが明らかなのに、実習生だの留学生だのといった虚構を使って外国人の労働力を確保し続けているために、外国人労働者の身分はいつまでたっても不安定なままなのだ。このような状態を続ければ、「日本に働きに行くと酷い目にあうぞ」といった悪評が外国人の間に拡がり、近い将来、外国人が日本に働きに来てもらえなくなることが懸念され始めている。

 外国人無しでもやっていけるというのなら結構だが、そうでないのなら、今のうちに外国人が働きやすい制度や環境をきちんと整備することが、将来の日本にとってもプラスになるはずだ。いや、それこそこれは日本にとって死活問題になるかもしれない。

 コンビニで働く留学生のアルバイトや外国人労働者の実態について、この問題を取材してきた芹澤氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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